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新規固定化触媒の開発

 金属触媒は現在の有機合成に欠かせないものとなっているが、その多くは人体や環境に対して有害であり、かつ高価でその資源に限りがあるため、使用後は廃棄せず、回収、再利用することが望まれる。当研究室で開発した「マイクロカプセル化(MC)法」や「高分子カルセランド(PI)法」を用いると、金属触媒をポリスチレンやポリシランを基盤とする高分子で包み込むように取り込んで、外に漏れ出さないようにし、回収、再利用することが可能である。このような手法を用い、オスミウム、パラジウム、スカンジウム、ルテニウム触媒などの固定化を達成している。

 近年、金や白金を中心とする金属ナノ粒子触媒が本手法を用いることで安定に固定化でき、空気中の酸素を酸化剤とする様々な酸化反応に有効に機能し、回収、再利用も可能なことを明らかにしている。金属ナノ粒子は、バルクの金属や金属錯体とは異なる特異な触媒活性を持つ反面、容易に凝集し触媒活性を失ってしまうことから、当研究室で開発された手法は画期的な手法として注目されている。また、複数種類の金属ナノ粒子や合金ナノ粒子を固定化した触媒も調製でき、これらのナノ粒子触媒は一つの金属からなるナノクラスターより高い活性、選択性を有したり、金属の組み合わせで反応経路を制御できたりすることも見いだしている。

 さらにこれらの触媒は、複数の反応を連続して行うタンデム反応やキラル金属ナノ粒子による不斉合成、マイクロチャネルリアクターやフローシステムといった次世代の反応システムへの応用も可能であり、効率的かつ環境への負荷の少ない有機合成法の開発の切り札として期待されている。

 空気中の酸素を酸化剤として金ナノ粒子を用いることで二つのアルコールからエステルが、金–コバルト二元金属ナノ触媒を用いることでアルコールとアミンからアミドが、金—パラジウム合金ナノ粒子を用いることでイミンが一工程で合成できる。金—パラジウム二元金属ナノ粒子とホウ素触媒を一緒に担持した触媒では、アリルアルコールの酸化とMichael反応の連続反応が進行する。

 ロジウムー銀二元金属ナノ粒子触媒とキラルジエン配位子からなるキラル金属ナノ粒子を用いることでα,β不飽和カルボニル化合物に対するアリールボロン酸の不斉1,4付加反応が高収率、高エナンチオ選択性をもって進行する。


Topics

  1. 金ナノ粒子触媒による空気中の酸素を酸化剤として用いる種々の反応
  2. 金属ナノ粒子触媒を用いた反応集積化
  3. キラル金属ナノ粒子による不斉合成
  4. マイクロチャネルリアクターやフローシステムへの応用
  5. 金ナノ粒子のサイズ効果

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