Catalysts play key roles

 私たちは、未来の「持続可能な社会構築」のために、科学者として、化学者として、そして有機合成化学者として、何をすべきで何ができるかを考えて、日々の研究を行っています。  私たちの研究室の主要テーマは、大きく分けて3つあります。(1)環境、(2)人類の健康・福祉、(3)エネルギー、に関するテーマです。

(1)環境  私たちには、この地球を維持していく責任があります。有機合成化学は、世の中の役に立つ様々な物質を作り出してきました。これからもその活動は続いていきますが、同時に地球環境を守っていかなければなりません。環境にいかに負荷をかけずに社会の役に立つものを作り続けるか。私たちに与えられた命題です。私たちは、真に優れた触媒を開発し、反応媒体として有機溶媒の代わりに水を用いることで、この問題が解決できるのではないかと考えています。

(2)人類の健康・福祉  私たちは、医薬品の開発、製造を通じて、人類の健康・福祉に貢献したいと考えています。医薬品を効率よく作るための触媒は特に大切で、活発に研究しています。また、これまで医薬品は、フラスコや反応釜を用いて作るのが普通でしたが、私たちはこれに代わる新しい方法として、流通型反応を用いる医薬品の連続合成法の開発を行っています。この研究はスタートしたばかりですが、「フロー精密合成」を用いることができれば、これまでよりもずっと効率良く、また、地球環境に負荷をかけず、安全に医薬品を作ることができるようになるでしょう。

(3)エネルギー  私たちは、エネルギーとしての水素に注目し、有機化学、有機合成化学を通じて「水素社会」に貢献したいと考えています。水素エネルギーは限りなくクリーンです。水素エネルギーを消費しても出てくるのは水です。水素は、「持続可能な社会」の主エネルギーとして大いに期待されます。ここで、水素を運んだり、水素を貯蔵したり、取り出したりするのに、触媒が必要になります。真に有効な触媒は、水素エネルギー社会の実現を早めることができるでしょう。

未来に向けて

 化学者は新しい物質を作り出すことができます。そして、有機化学者、有機合成化学者は、その気になればフラスコ一杯の、場合によってはトラックに一杯の物質を作ることができます。自然界にもない新しい物質を、大量かつ自在に作り出すことができるのは、全科学の分野の中でも、有機化学者、有機合成化学者だけでしょう。  そのいわば「特権」を活かして、いかに社会の役にたつ新しいものを作り出すか。それは、不可能を可能にする夢の触媒であり、多くの人の命を救うスーパー医薬品かもしれません。あるいは、水素エネルギー社会の根底を支える新物質かもしれません。  有機化学、有機合成化学をベースにより広い視野に立って、これらの大きな課題を研究していけば、そこには限りない未来が広がっています。

 ぜひ我々と一緒に、エキサイティングな研究に挑戦してみませんか他大学からの入学希望者(大学院博士課程・修士課程)も歓迎します。もし何かわからないことや詳しく知りたいことがあれば、遠慮なく問い合わせて下さい。研究室への訪問や見学は歓迎します。メールでの問い合わせでもOKです。アドレスは、shu_kobayashi@chem.s.u-tokyo.ac.jpです。