有機化学合成化学

 有機合成化学は、有機化学の中でも中心的な位置を占めています。

楽しい「ものづくり」

 有機合成化学は、自らが望む化合物を実際につくり、手にすることができます。ここではその過程を、簡単に「ものづくり」と言いますが、この「ものづくり」は、わくわくするようなとても楽しい作業です。そして、残念ながら他の分野の科学者にはなかなかできない、ある意味では有機合成化学者にのみ自在に振る舞い、享受することが許されている作業なのです。

 化合物のつくり方にさらに磨きをかけるか、つくった化合物を使ってさらに新しい化合物をつくり出すか、はたまた、つくった化合物を使って生体機能や疾患の解明を行うか、それは有機合成化学者の自由です。その意味で、有機合成化学は、潜在的に実に多くの可能性を秘めているということができます。

人間と環境の両方を考えた「ものづくり」

「ものづくり」は実は、ずっと以前からも行われてきており、世の中のいろいろなところで役に立ってきました。一方、私たちは、この「ものづくり」が今、一つの過渡期を迎えていると考えています。

 これまで私たち人間は、何かをするとき、まず人間を第一に考えて行動してきました。これは「ものづくり」にも当てはまります。しかし、人間のことだけを考えて、我々人間が便利になるように、我々人間の生活が豊かになるようにだけ考えて「ものづくり」をしてきた結果、あるときは公害を引き起こし、またあるときは環境汚染を誘起してしまいました。

 これらは決して人間が意図して起こしたものではありませんが、私たちは今、「ものづくり」の基本的な考え方を変えなければいけないと思っています。それは、人間だけのことを考えるのではなく、人間と環境の両方を考えて「ものづくり」をする、ということです。

 そうしたいわば新しい視点に立って「もの作り」をする、というのが、有機合成化学研究室の大きな方針であり、特徴でもあります。

 個々の研究テーマについては、研究室のホームページの「研究内容」を見て下さい。一応、専門外の人にもわかるように書いたつもりですが、もしかしたら少し難しいかもしれません。もし何かわからないことやもっと詳しく知りたいことがあったら、遠慮なく問い合わせて下さい。後にも書きますが、研究室への訪問や見学はいつでも歓迎します。

研究者の養成

 当教室は、研究者の養成を第一に考えています。将来、大学の研究室や研究所で働くか、あるいは企業に行って働くかを問わず、世界で通用する研究者を育成していきたいと思っています。

研究は本当に楽しいもの

 これから研究者を目指して本格的な研究をスタートしようとしているみなさんは、研究とはどんなものだと考えているでしょうか。研究は、本当に楽しくわくわくするものです。世界でこれまで全く明らかにされていなかった事象をあなたが今、明らかにできるかもしれない、世界でこれまで誰もできなかったもの、例えば、これまで誰もつくることができなかった新しい触媒やこれまで達成不可能と考えられていた反応を、あなた自身がまさに今、つくり出そうとしている!まさにエキサイティングでわくわくするではないですか。

一流の研究者になるためにどうするか?

 一流の研究者になるためには、自分自身で一流の研究に早くたずさわることことが大事だと思います。そこで、有機合成化学研究室では、原則として研究室配属されたその日から独立のテーマの研究を開始してもらうようにしています。もちろん、実験上の基本的な操作や技術の習得は必須です。それらの習得には、マンツーマンでの指導体制を取っています。しかしあくまで、練習実験を通じてこれらの操作や技術を習得するのではなく、実践の研究を通じて学んでもらうようにしています。真剣勝負の中での取得の方が効率がよく、また本当に自分のものになりやすいという考えから、このような方法をとっています。

  中には初めのテーマがうまくいって、4年生のうちに論文発表まで漕ぎつける強者もいます!

  一方で、生き馬の目を抜くような研究というのは、そう簡単にはうまくいきません。研究者には忍耐と地道な努力が必要です。私は、研究者には「しつこさ」と「楽観的な性格」が備わっているとよいと考えています。少しぐらい研究がうまくいかなくても簡単に諦めずに、しつこくせまること。失敗しても、「今回失敗したから次もまた失敗かもしれない」と考えるより、「今回は失敗したけれど、次こそはきっとうまくいく」と考える人の方が研究者には向いている。多少脳天気でも構わない、前向きで明るい人の方がよいのです。

「ねあか」な研究者を目指そう!

 もしかしたらあなたは、研究者は「根暗」なものと考えていませんでしたか?私の知っている一流の研究者は、もちろん「根暗」な(あるいはそう見える)人もいないではありませんが、多くが前向きで明るい人です。

 有機合成化学研究室は、ねあかな人が多い明るい教室です。

「大発見」は失敗から生まれる

 先ほど研究はそう簡単にはうまくいかない、と書きました。これは裏を返せばあなたがやる実験の多くは失敗してしまうかもしれない、ということです。なんだ、失敗するのか、とがっかりしないで下さい。実は、本当の大発見というのは失敗の中から生まれることが多いのです。ノーベル賞級の大発見が実は失敗から生まれた、といのは結構ある話なのです。だからあなたが配属された研究室で実験して仮に失敗してもがっかりする事なかれ。そこには大発見が隠されているかもしれない。

大発見への心の準備は怠る事なかれ

 ここで大事なのは、失敗をどう受け止めるか、です。なんだ失敗だ、とそのまま捨ててしまったら、それで終わり。大発見を捨ててしまうことになりかねません。失敗!というのは実は自分が考えたとおりのことがフラスコの中で起こらなかった、ということです。では何が起こったのか?これを突き詰めていくと、思わぬ化合物や予期しなかった新反応が見つかるかもしれません。

研究室見学はいつでも歓迎!

 さて、有機合成化学研究室に興味をもっているみなさんへの簡単なメッセージのつもりで書き始めましたが、結構長くなってしまいました。実はまだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、あまり長くなってもいけないので、ここらあたりでいったん筆を置きます。もしかしたら第二章ということで、また追加するかもしれません。

 いずれにしても、先にも書きましたが研究室見学はいつでも歓迎!です。どうぞ気軽に足を運んで下さい。また、メールでの問い合わせでもOKです。アドレスは、shu_kobayashi@chem.s.u-tokyo.ac.jpです。

当研究室(当専攻)では、以下の点も充実しています。

  •   *各種奨学金
  •   *短期留学制度
  •   *国際交流