フロー精密合成
医薬品や香料などのファインケミカルを生産するにあたり、これまでの精密有機合成では1反応ごとにフラスコや反応釜を用いて反応を行う「バッチ合成」が主流であったが、この反応をカラム中で溶液を連続的に流しながら行う「フロー合成」へ移行することができれば、非常に効率よく目的物を合成することができる。特に、光学活性触媒を担持したカラムを用いる不斉合成は、光学活性医薬品やファインケミカルをフロー合成するために必須である。当研究室では、これまでに、様々な高分子固定化金属触媒の開発を行っており、様々な酸化反応や還元反応を連続的にフロー反応で行えることを明らかにした。また、最近開発した光学活性カルシウム触媒を固相担体に担持し、触媒的不斉反応をフロー反応で連続的に行うことに成功した。また、このフロー反応を鍵段階とする生理活性物質の全合成を、多段階連続フロー反応装置を用いて実現している。この分野は理想的な精密有機合成を実現するために非常に重要であり、将来的に大きな発展が期待されている。
Reviews
- Flow “Fine” Synthesis: High Yielding and Selective Organic Synthesis by Flow Methods
- S. Kobayashi,
- Chem. Asian J., Early View , (2015). DOI: 10.1002/asia.201500916
- Asymmetric Carbon-Carbon Bond Formation under Continuous Flow Conditions with Chiral Heterogeneous Catalysts,
- T. Tsubogo, T. Ishiwata, S. Kobayashi,
- Angew. Chem. Int. Ed., 52, 6590-6604 (2013). DOI: 10.1002/anie.201210066