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単電子移動反応による選択的C–H結合活性化法の開発

 炭素—水素結合(以下C–H結合)の直接的クロスカップリング反応における新規手法の開発は研究対象として非常に興味深い。通常、C–H結合はその安定性ゆえに有機化学反応への適用が困難であるものの、C–H結合の直接的クロスカップリング反応はカップリング前駆体の調製操作を省略出来るため、効率的な合成法として期待される。当研究室では、単電子移動反応を活用したアミン類のC–H結合の選択的活性化を行っている。


Topics

  1. 金属アンチモナートを二官能性触媒とするCDC反応
  2. 第三級アミンの脱水素型クロスカップリング(CDC)反応のための協同的触媒系の構築
  3. 金属フリーの3級アミン類の脱水素型クロスカップリング(CDC)反応

金属フリーの3級アミン類の脱水素型クロスカップリング(CDC)反応

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解説

 炭素−水素結合の直接的活性化を伴う化学変換は、複数段階を要する高反応性中間体の合成を省略し、従来よりも大幅に短い工程数で目的化合物の合成を実施出来る高効率的な手法として近年注目を集めている。また、炭素−水素結合活性化反応の1つである脱水素型クロスカップリング(CDC)反応は、異なる2種類のアルカンの炭素−水素結合の切断・新規炭素–炭素結合の形成を伴う反応で、様々な多様性を有する化合物の新規合成法として期待される。当研究室は、スルフリルクロリドを触媒として用いることによって、第三級アミンの金属フリーCDC反応を酸素雰囲気下・温和な条件で行う新規手法を確立した。これによって、種々のN–テトラヒドロイソクマリン誘導体の合成が可能となった。また、この反応では、触媒量のスルフリルクロリドがラジカル開始剤として作用し、自動酸化機構を介して金属フリーCDC反応が進行しているものと考えられる。


論文へのアクセス

  1. Sulfuryl Chloride as an Efficient Initiator for the Metal-Free Aerobic Cross-Dehydrogenative Coupling Reaction of Tertiary Amines,
  2. A. Tanoue, W.-J. Yoo, S. Kobayashi,
  3. Org. Lett., 16, 2346-2349 (2014). DOI: 10.1021/ol500661t

第三級アミンの脱水素型クロスカップリング(CDC)反応のための協同的触媒系の構築

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解説

 炭素−窒素結合は医薬品などの重要な構成要素の1つである。この結合を活用した炭素−炭素結合形成反応の開発は、生物活性を持つ化合物群を合成する上で重要である。また、炭素−水素結合の直接的変換を伴うCDC反応は、短段階での化合物合成を可能にする効率的な手法として活発な開発が望まれる。近年、当研究室は、ヘキサクロロアンチモナートアニオンとN–ヒドロキシフタルイミドとの2つからなる協同的な触媒系を構築した。この触媒系は、酸素雰囲気下、N–アリールテトラヒドロイソキノリンのCDC反応に適用可能であり、高収率をもって目的の炭素−炭素結合形成体を与えた。


論文へのアクセス

  1. Antimony/N-Hydroxyphthalimide as a Catalyst System for Cross-Dehydrogenative Coupling Reactions under Aerobic Conditions,
  2. A. Tanoue, W.-J. Yoo, S. Kobayashi,
  3. Adv. Synth. Catal., 355, 269-273 (2013). DOI: 10.1002/adsc.201200999

金属アンチモナートを二官能性触媒とするCDC反応

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解説

 炭素−水素結合の直接的活性化を伴う化学変換は、複数段階を要する高反応性中間体の合成を省略し、従来よりも大幅に短い工程数で目的化合物の合成を実施出来る高効率的な手法として近年注目を集めている。また、炭素−水素結合活性化反応の1つである脱水素型クロスカップリング(CDC)反応は、異なる2種類のアルカンの炭素−水素結合の切断・新規炭素–炭素結合の形成を伴う反応で、様々な多様性を有する化合物の新規合成法として期待される。当研究室は、スルフリルクロリドを触媒として用いることによって、第三級アミンの金属フリーCDC反応を酸素雰囲気下・温和な条件で行う新規手法を確立した。これによって、種々のN–テトラヒドロイソクマリン誘導体の合成が可能となった。また、この反応では、触媒量のスルフリルクロリドがラジカル開始剤として作用し、自動酸化機構を介して金属フリーCDC反応が進行しているものと考えられる。


論文へのアクセス

  1. Zinc(II) Hexachloroantimonate-Catalyzed Oxidative Allylation of Glycine Derivatives,
  2. W.-J. Yoo, A. Tanoue, S. Kobayashi,
  3. Asian J. Org. Chem., 3, 1066-1069 (2014). DOI: 10.1021/ajoc.201402108