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二酸化炭素を用いる新規化学反応の開発

 二酸化炭素は安全・安価で、かつ取り扱いが容易な気体分子である。そのため、合成化学的観点から、1炭素源としての二酸化炭素の利用が望まれている。しかし、二酸化炭素は高い安定性を示す一方で反応性に乏しく、有機合成への応用は困難である。この問題を解決すべく、当研究室では、高いエネルギーを内包する出発原料と、触媒とを組み合わせることによって、二酸化炭素を有機分子内に取り込む有用な反応を開発し、様々な分子に複雑な機能性を与えることを見出した。


Topics

  1. 二酸化炭素の固定化を経由する多成分連結反応
  2. ピロール・インドール誘導体のカルボキシル化反応

二酸化炭素の固定化を経由する多成分連結反応

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解説

 イソクマリン誘導体は、種々の生物活性を示す化合物群であり、現在もその合成法の開発が活発に行われている。この化合物群は、o−アルキニル安息香酸の分子内環化によって合成可能であるものの、この出発原料の合成に多段階の化学変換を要する。一方、当研究室は、系中で発生させたベンザインに対し末端アルケンと二酸化炭素とを作用させ、これら3成分を一挙に連結させることによって、イソクマリン誘導体の新規合成法を開発した。本反応では、NHC–銅錯体を触媒として用いることによって、反応が円滑に進行し、種々のイソクマリン誘導体合成が可能である。


論文へのアクセス

  1. Synthesis of Isocoumarins Through Three-Component Couplings of Arynes, Terminal Alkynes, and Carbon Dioxide Catalyzed by an NHC-copper complex,
  2. W.-J. Yoo, T. V. Q. Nguyen, S. Kobayashi,
  3. Angew. Chem. Int. Ed., 53, 10213-10217 (2014). DOI: 10.1002/anie.201404682

ピロール・インドール誘導体のカルボキシル化反応

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解説

 二酸化炭素中の1炭素を有機分子に修飾する二酸化炭素固定化反応は、合成化学上有用な手法である。また、二酸化炭素は高安全性・低コストであるため、優れた反応剤として期待される。しかし、二酸化炭素を有機合成に用いる際は、高気圧条件や遷移金属触媒といった外的要因によって、反応性を高める必要があることがしばしばである。近年、我々は、大気圧の二酸化炭素雰囲気条件下、ピロール・インドール誘導体のカルボキシル化反応が進行することを見出した。また、リチウムt-ブトキシドを過剰量用いることによって、副反応である脱炭酸反応を抑制出来ることも報告している。


論文へのアクセス

  1. Base-Mediated Carboxylation of Unprotected Indole Derivatives with Carbon Dioxide,
  2. W.-J. Yoo, M. Guiteras Capdevila, X. Du, S. Kobayashi,
  3. Org. Lett., 14, 5326-5329 (2012). DOI: 10.1021/ol3025082
    1. Lithium tert-Butoxide-Mediated Carboxylation Reactions of Unprotected Indoles and Pyrroles with Carbon Dioxide,
    2. W.-J. Yoo, T. V. Q. Nguyen, M. Guiteras Capdevila, S. Kobayashi,
    3. Heterocycles, 90, 1196-1204 (2015). DOI: 10.3987/COM-14-S(K)94