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アルカリ土類金属を用いる触媒的不斉反応の開発研究

 アルカリ土類金属は地球上に豊富に存在する金属ですが、有機合成の触媒として活用されている例は少ないのが現状です。当研究室では、アルカリ土類金属であるバリウム、カルシウム、ストロンチウムを用いることで高度な立体選択的反応が可能であることを見いだしました。


Review:

  1. Chiral Ca-, Sr-, and Ba-Catalyzed Asymmetric Direct-Type Aldol, Michael, Mannich, and Related Reactions,
  2. T. Tsubogo, Y. Yamashita, S. Kobayashi,
  3. Top. Organomet. Chem., 45, 243-270 (2013). DOI: 10.1007/978-3-642-36270-5_7 解説ページへ>

Topics

  1. キラルヨウ化カルシウムによるβ-アミノカルボニル化合物が得られるマロン酸エステルのイミンへの不斉Mannich型反応
  2. カルシウム触媒を用いたグルタミン酸誘導体の合成及びピロリジン誘導体の合成
  3. 塩化カルシウムを触媒とした不斉有機合成反応
  4. ジチオアセタール合成のためのカルシウム触媒を用いた不活性アルキンのビスヒドロキシチオレーション

キラルカルシウム、ストロンチウムおよびバリウム触媒による不斉アルドール、Michael、Mannich型および関連反応

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解説

 本論文は、近年のキラルカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムを触媒として用いた直接的不斉アルドール、Michael、Mannichおよび関連反応についてまとめたものです。カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムは、地球上に豊富に存在し、ユビキタス元素であり、他の遷移金属と比べて比較的安全であり、環境負荷の少ない優れた元素です。しかしながら、これら金属を不斉有機合成に用いた例は、限られていました。これら金属の強いBrønsted塩基性と温和なLewis酸性は、有用で魅力的な特性であり、これら性質は、触媒作用に影響を与えると同時に不斉修飾の可能性を広げています。本総説では、触媒的不斉炭素–炭素結合反応と関連した反応が、キラルアルカリ土類金属により高エナンチオ選択的に進行することが見いだされました。


論文へのアクセス

  1. Chiral Ca-, Sr-, and Ba-Catalyzed Asymmetric Direct-Type Aldol, Michael, Mannich, and Related Reactions,
  2. T. Tsubogo, Y. Yamashita, S. Kobayashi,
  3. Top. Organomet. Chem., 45, 243-270 (2013). DOI: 10.1007/978-3-642-36270-5_7

キラルヨウ化カルシウムによるβ-アミノカルボニル化合物が得られるマロン酸エステルのイミンへの不斉Mannich型反応

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解説

 我々は、ヨウ化カルシウムとピリジンビスオキサゾリン(Pybox)より調製された空気中安定なキラルヨウ化カルシウムを開発しました。本触媒は、マロン酸エステルのイミンへの触媒的不斉Mannich型反応に適用可能で有ることを見いだした。なお、本反応においては、芳香族イミンのみならず脂肪族イミンにも適用可能で有り、目的とする付加体が中程度から高収率、なおかつ高エナンチオ選択性にて得られました。我々の知る限り本反応は、金属触媒を用いたマロン酸エステルのイミンへの初めての高エナンチオ選択的不斉Mannich型反応です。また、Mannich付加体は、α-ヒドロキシ β-アミノ酸誘導体へ変換可能でます。


論文へのアクセス

  1. Chiral Calcium Iodide for Asymmetric Mannich-type Reactions of Malonates with Imines Providing β-Aminocarbonyl Compounds,
  2. T. Tsubogo, S. Shimizu, S. Kobayashi,
  3. Chem. Asian J., 8, 872-876 (2013). DOI: 10.1002/asia.201300102

カルシウム触媒を用いたグルタミン酸誘導体の合成及びピロリジン誘導体の合成

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解説

 塩化カルシウム、Box型配位子および有機塩基より調製された触媒により不斉1,4-付加反応および[3+2]付加環化反応が進行することを見いだしました。本反応は、Michael付加体及びピロリジン誘導体が中程度から高収率および高エナンチオ選択性で得られてくることがわかりました。さらに、Lewis酸性が強いカルシウムトリフレートとPyboxより調製された触媒を用いると[3+2]付加環化反応が抑えられ、1,4-付加体のみが得られることもみいだしました。本反応は、β位に置換基を有するグルタミン酸誘導体を合成する優れた方法です。


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  1. Synthesis of Glutamic Acid and Highly Functionalized Pyrrolidine Derivatives by Utilizing Tunable Calcium Catalysts for Chemoselective Asymmetric 1,4-Addition and [3+2] Cycloaddition Reactions,
  2. M. Hut'ka, T. Tsubogo, S. Kobayashi,
  3. Adv. Synth. Catal., 355, 1561-1569 (2013). DOI: 10.1002/adsc.201300171

塩化カルシウムを触媒とした不斉有機合成反応

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解説

 Pybox-塩化カルシウム触媒が、1,3-ジカルボニル化合物のニトロアルケンへの不斉1,4-付加反応に適用可能であることを見いだし、γ-ニトロカルボニル化合物が高収率、高エナンチオ選択性で得られてくることを見いだしました。本反応は、空気中においても触媒の失活が見られませんでした。さらには、フロー反応系に適用可能で有ることを見いだしました。


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  1. Calcium Chloride (CaCl2) as Catalyst for Asymmetric Organic Reactions,
  2. T. Tsubogo, Y. Yamashita, S. Kobayashi,
  3. Topics in Catalysis, 57, 935-939 (2014). DOI: 10.1007/s11244-014-0254-z

ジチオアセタール合成のためのカルシウム触媒を用いた不活性アルキンのビスヒドロキシチオレーション

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解説

 ジチオアセタール合成のためのカルシウム触媒を用いた不活性アルキンのビスヒドロキシチオレーション

 Lewis酸であるCa(OSO2C4F9)2 (Ca(ONf)2)によりアルキンのビスハイドロチオレーションにより、アンチ-Markovnikov型ジチオアセタールが得られました。本反応は、高選択反応であり様々な基質に適用可能でありました。また、ビニルスルフィドが本反応の中間体であり、Ca(ONf)2が不活性なビニルスルフィドへの付加反応を触媒していることを明らかとしました。


論文へのアクセス

  1. Calcium-Catalyzed Bis-Hydrothiolation of Unactivated Alkynes Providing Dithioacetals,
  2. M. Hut’ka, T. Tsubogo, S. Kobayashi,
  3. Organometallics, 33, 5626-5629 (2014). DOI: 10.1021/om500442u