東京大学 大学院理学系研究科 化学専攻・理学部化学科

教員からのメッセージ

化学科講義、英語化のインパクト
化学科教員一同

化学は、物理学と生物学の間にあって、Central Science(中核科学)としての役割を担っています。また、化学は、生命を含む自然現象を分子レベルでの構造とダイナミクスに還元して、より深く理解しようとする学問でもあります。また、この深い理解に基づいて新しい物質を作り出し、科学の発展を先導する役割も果たしています。このような化学の広がりに対応して、化学専攻は、基幹講座(本郷)を中心として、スペクトル化学研究センター、アト秒レーザー科学研究センター、先端科学技術研究センター、地殻化学実験施設、物性研究所、大気海洋研究所、地震研究所、総合文化研究科、新領域創成科学研究科、また学外の宇宙航空研究開発機構/ JAXA、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の周辺領域講座の参加を得て、幅広い研究、教育を行う体制を整えています。さらに、より実社会に近い研究を進めるグリーン・サステイナブル・ケミストリー社会連携講座や革新分子技術講座も専攻と連携して開設しています。このように、化学専攻では多くの化学関連分野を広く網羅することで、物質(もの)そのものを扱う基礎的な研究や物質をつくる応用研究、さらには生命や宇宙の神秘を分子レベルで解き明かす研究に至るまで、多彩かつ学際的な分野で活躍できる学生の教育をしています。また、将来グローバルに活躍できる人材を育成するために、大学院カリキュラムでは英語で講義をしています。

現在、化学科に進学した学生のほぼ全員が大学院に進学し、修士の学位を取ります。その半分近い学生は博士課程に進み、博士の学位も取ります。そして、大学院に進学したほとんどの学生は、様々な機会において英語で化学を論じ、またその成果を原著論文として英語で発表します。さらに、大学院を修了して社会に出れば、それがアカデミアの土俵であろうと企業の土俵であろうと、他国の研究者と交流しかつ切磋琢磨しながら競争し、グローバルに活躍する機会は益々増えていきます。その時に使う言語は、必然的に英語になります。これからわかるように、今や「化学に携わること」と「英語を使うこと」は、切り離せないのです。

大学院教育を担う化学専攻では、2002年から博士課程1年の大学院生のために「Academic English for Chemistry」を開講し、2008年からは修士課程1年の大学院生のために「Basic Academic English for Chemistry」を開講し、それぞれの講義にネイティブスピーカーの先生をお招きして大学院生の英語能力の向上に努めてきました。また、現在の大学院の講義は、すでに全て英語で行われています。すなわち、化学専攻の大学院教育は、グローバルに活躍できる人材育成を見据えて、すでに10年あまり前進してきたのです。

ここにきて化学科では、より実のあるグローバル人材育成を進めるために、理学部の他学科に先駆けて、学部講義の英語化を進めることにしました。これは、「化学科が学部から大学院まで切れ目なく、グローバルに活躍できる人材を育てることに真剣に取り組もうとする表れ」と、学部の学生諸君には考えて頂きたいと、化学科教員一同思っています。

おそらく、学部の学生さんには色々な心配があるでしょう。英語の講義についていけるのか、英語で化学をまともに学んで理解できるのか、等。化学科教員は、そういった心配を払拭すべく、講義に日本語を交ぜて説明を加えることはもちろんのこと、講義でよくわからなかったことを質問できる「オフィスアワー」を設けて個々あるいはグループの学生に対処していくことも考えています。さらに、学部生のために、ネイティブスピーカーの先生による「化学英語演習」も開講しています。

幸運にも、化学は「化学式」という世界共通言語があります。おそらく、学生の皆さんが心配している以上にすんなりと、英語で講義が受けられると思います。何よりも重要なことは、化学科に進学した学生全員がグローバルに活躍できる人材として、化学科・化学専攻を将来巣立っていってくれることです。化学科講義の英語化がその一助になることは、間違いないと思います。

教員集合写真
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