宮村 浩之
東京大学大学院理学系研究科化学専攻 助教
1982年埼玉県生まれ。2009年、東京大学大学院薬学系研究科博士課程終了。博士(薬学) 東京大学大学院理学系研究科 特任助教を経て、2015年より現職。2018-2019 University of California, Berkeley 化学科 客員研究員。2010年、Winner of The Reaxys PhD Prize。2018年、有機合成化学協会 奨励賞受賞。
A03 不均一系触媒および複雑触媒系に即した低エントロピー反応空間の設計理論
不均一系触媒を用いる反応において、フロー系を用いると、従来のフラスコを用いる場合に比べ、反応速度が大幅に向上することを見出しました。このように、フロー系で特異に反応速度や選択性が向上する触媒系に焦点を絞って、領域メンバーと共同で、フロー系における反応空間に由来する物理的因子が触媒反応に与える影響を解析し、様々な触媒反応に最適なフロー反応系の設計理論を構築します。
研究分野
有機合成化学、触媒化学
代表的な研究紹介
- Heterogeneous Supramolecular Catalysis through Immobilization of Anionic M4L6 Assemblies on Cationic Polymers
- Miyamura, H. Bergman, R. G. Raymond, K. N. Toste, F. D.
- J. Am. Chem. Soc., 142, 19327-19338 (2020). DOI: 10.1021/jacs.0c09556
世界で初めての内部空間を触媒活性点として持つ高分子固定化超分子触媒
UC Berkeleyとの共同研究によって、内部空間を触媒活性点とする正四面体型のアニオン性キラル超分子錯体をカチオン性高分子に担持することで、世界で初めての不均一系超分子錯体触媒を開発した。本触媒はAza-Prins反応と、不斉Aza-Cope 反応に高活性を示し、カラムに触媒を充填して反応を行う連続フロー合成においても、収率とエナンチオ選択性が長時間に渡り維持された。高分子担体への固定化により、触媒の安定性や活性が大幅に向上すること、連続フロー系に用いることで対応する均一系超分子触媒の十倍以上のTONを示すこと、担体中のアンモニウムカチオンの構造によって、触媒の遷移状態が制御されるアロステリック効果など、従前の触媒系にはない、様々な新機能を見出し、新たな人工酵素開発の道筋を開いた。
- Polysilane-Immobilized Rh-Pt Bimetallic Nanoparticles as Powerful Arene Hydrogenation Catalysts: Synthesis, Reactions under Batch and Flow Conditions and Reaction Mechanism
- Miyamura, H. Suzuki, A. Yasukawa, T. Kobayashi, S.
- J. Am. Chem. Soc., 140, 11325-11334 (2018). DOI: 10.1021/jacs.8b06015
不均一系金属ナノ粒子触媒を用いる核水添反応の連続フロー系における反応加速
芳香族化合物の核水添反応は、水素社会実現のための水素貯蔵や、水素輸送に重要な基盤技術であるとともに、様々な医薬品原体の合成にも用いられる重要な反応である。このような核水添反応に温和な条件下(1気圧水素、50 ºC)高活性を示すポリシランーアルミナに担持したRh-Ptナノ粒子触媒を開発した。本触媒をカラムに充填して基質を流通させて反応を行う、芳香族化合物の連続フロー核水素化反応において、特異な反応選択性や,フロー系においてバッチ系に比べ大幅な反応加速(>27倍)が起こることを見出した。
- Direct Synthesis of Hydroquinones from Quinones through Sequential and Continuous-Flow Hydrogenation-Derivatization Using Heterogeneous Au-Pt Nanoparticles as Catalysts
- Miyamura, H. Tobita, F. Suzuki, A. Kobayashi, S.
- Angew. Chem. Int. Ed., 58, 9220-9224 (2019). DOI: 10.1002/anie.201904159
連結型連続フロー系を用いる、空気に不安定なヒドロキノンの誘導体化反応
連続フロー系によるキノンのヒドロキノンへの選択的な水素化反応と、ヒドロキノンの誘導化反応のフロー反応系を連結することで、空気に不安定なヒドロキノンをフロー系中で安定に取り扱うことが可能となり、キノンからヒドロキノンへの直接的かつ原子効率に優れた誘導化反応を実現した。