全自動元素分析装置(炭素水素窒素同時分析)と酸素フラスコ燃焼-IC法(ハロゲン硫黄分析)においては,標準試料の分析値から作成した検量線を使って依頼試料の分析値を求めています,いくつもの市販の標準試料を目的に合わせて使い分けていますので,何をどのような目的で利用しているかについて一つずつご紹介していきます.
キシダ化学株式会社 有機元素分析用標準試料
コードNo.: 210-05374
記番号: SMA-SP-9
試料名:Antipyrine アンチピリン
組成式: C11H12N2O
含有率%: C, 70.19; H, 6.43; N, 14.88%
まずは最も使用頻度が高いアンチピリンです.vario MICRO cubeを使用したCHN分析におけるデイリーファクターを取るための試料として使っています.アセトアニリドも同じ目的でよく使われるようですが,当分析室への依頼試料の炭素水素窒素の含有率を考慮した場合,こちらがより適合していると判断しています.ひょう量操作の観点からみると,アセトアニリドに比べて結晶の粒径や形状にややばらつきがあるようにも思えますがまず問題はありません.
分子模型で表された立体構造
<参考文献>
キシダ化学株式会社による安全データシート(MSDS)
キシダ化学株式会社 有機元素分析用標準試料
当分析室で使用しているDIONEX社(現ThermoScientific社)の陰イオン測定用カラムIonPac AS12 Aは以下のような構造のイオン交換樹脂が充填されています.一般に表層被覆型と呼ばれるタイプのもので,イオン交換が行われるのはラテックス粒子の部分です.この粒子が交換容量を増大させ,分離効率を上げる役割を担っています.また,基材の粒子径,架橋度,ラテックス粒子のサイズ,第4級アンモニウム基の種類などにより選択性が変わります.
イオン交換分離は以下のイメージ図のように,分析イオンと溶離液とのイオン交換部位に対する相対的な親和力に基づいて行われます.したがってより強い親和性を示すイオンは,より強くカラムに保持されるので溶出は遅くなります.一般に陰イオン交換での溶出順序は主に,イオン半径とイオンの価数によって決まります.
<参考文献>
・日本ダイオネクス社,イオンクロマトグラフ分析法概説 (第14班),日本ダイオネクス社,p3-4,2008.
・及川紀久男,川田邦明,鈴木和将,(社)日本分析化学会,分析化学 実技シリーズ 機器分析編・9 イオンクロマトグラフィー,共立出版p76-80,2010,
2015.4.6よりすべてのCHN分析をエレメンタール社製 vario MICRO cubeで行なっています.合わせてウェブサイトも順次更新しますので,今しばらくお待ちください.(4.3まではすべてヤナコテクニカルサイエンス社製 CHNコーダー MT-6 で行ないました.)
なお,検量線など最低限必要な情報については各研究室の教授もしくは准教授の先生宛に送付しました.個々の試料についてなど疑問点がありましたらお気軽にお問い合わせください.
空気中で不安定な試料や吸湿性試料の場合,窒素雰囲気下でサンプリングを行います.以下に当分析室で行っている手順をご紹介します.各々の分析室によってやり方は様々ですが,ここではグローブバッグを使っています.
(1) 風袋(白金ボートの上にスズカップを載せたもの)の質量を測定して記録する.
(2) 必要な道具(台やスパチュラなど)と試料を,窒素ボンベにつないだグローブバッグに入れてガス置換(3回)を行なう.
(3) 適切なタイミングで試料瓶のフタを開けてサンプリングする.
(4) 天びんの扉を閉じてゼロ点補正し,サンプリングした試料をグローブバッグから取り出してグロス(白金ボート+スズカップ+試料)を測定する.
(5) (4)の質量から(1)の質量を差し引いて試料量とする.自動燃焼分析装置(CHN CORDER MT-6)に導入し,分析を行なう.
↓↓↓以下注意リスト↓↓↓
I. 試料瓶のフタを開ける前にチェックすること.
*グローブバッグの中に道具は揃っているか.
*風袋の重量を記録したか.
*装置の状態&試料導入までの時間をチェック(オートサンプラーによる装置への導入になるべくタイミングが合うように).
*試料瓶に巻かれたパラフィルムやテフロンテープの端を少しはがしたか(取り扱いやすいように).
II. サンプリング中の注意
*静電気対策をして試料が散らないようにする.
III. 試料をグローブバッグから取り出す前にチェックすること.
*試料が風袋やスズカップの外側などに付着していないか確認する.
*装置の状態&試料の導入までの時間チェック(なるべく直前に取り出してタイミングを合わせる).
*天びんの扉を閉じてゼロ点補正したか.