測定にまつわるトピックス

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No. 19 測定原理 (その3:CHN差動熱伝導度法の計算 導出過程) 更新日:2011.10.22,2017.4.4,2020.7.17

<こちらの装置は2016年4月に廃棄し,エレメンター社vario MICRO cubeに切り替えました.>
vario MICRO cubeのトラブル報告に伴い、2020.7.17追記:本装置の使用を取りやめ、廃棄した理由は、以下の理論式に実際の信号値、試料量を代入して得られる分析値と、ソフトウェア上で表示される値が異なることについて納得できる説明がなされなかったこと、データを補正するなどの加工を行なって保存するとその操作の過程がデータ上消失し、後から追跡できなくなることに対してメーカー側の適切な対応がなかったことが主に挙げられます。


TOPICSのNo.18の続きとして,式の導出方法を示したいと思います.


















参考文献:
Ando, K.; Morisawa, S.; Hozumi, K., Bunseki Kagaku, 46, 1997, 627-632.


No. 18 測定原理 (その2:CHN差動熱伝導度法の計算イメージ) 更新日:2011.9.22,2017.4.4

<こちらの装置は2015年4月に廃棄し,エレメンター社vario MICRO cubeに切り替えました.>

TOPICSのNo.2の続きとして,CHN測定による分析値の計算方法を示したいと思います.下図は測定装置のポンプ内の試料気体のモル分率変化を表したものです.実際にはH2O, CO2, N2を合計しても全体の2%程度ですが,誇張して描かれています.ポンプ内の気圧は検出器の入口側と出口側,参照側とで変化せず,大気圧で一定です.

上段の混合成分系が実際の測定系を表していますが,下段の単成分系の場合(仮想)と比較すると,Hの検出器の出口ではH2Oの気体が取り除かれているため,残りのCO2とN2のモル分率変化が単成分の場合と比べて上昇しています(a'>a).同じことが,窒素の検出器でも起きていて,CO2とH2Oが取り除かれているので,窒素のモル分率変化が単成分の場合と比べて上昇しています(c>c').炭素の検出器においては,H2Oの除去と窒素のモル分率上昇の影響を受けるので一概に上昇とは断定できません.測定では,検出器の出口と入口での混合気体の熱伝導度の差をカウント数で計測し,このシグナルから含有量を計算しますが,検出器における各気体のモル分率と最初の状態のモル分率は異なるので,一連の変化を考慮して補正する必要があります.



具体的な計算式を以下に示します.


全体の流れとしては以下のようになります.
1. 標準試料を正確に計量し,各元素の含有量(理論値)と分析の各元素のシグナル(カウント数)から補正係数fを求める.
2. 複数回,標準試料の測定を行い,得られた補正係数の平均値を各元素について求める.
3. 未知試料の分析における各元素のシグナルと2の補正係数を代入して含有量を求める.

次の項目では,この式を導く過程を示します.


参考文献:
"元素分析技術セミナー ヤナコCHNコーダー 資料"1999年4月2日 上智大学
ヤナコ分析工業株式会社技術グループ 編,"CHNコーダーの素顔" さんえい出版株式会社,1993.
Ando, K.; Morisawa, S.; Hozumi, K., Bunseki Kagaku, 46, 1997, 627-632.