測定にまつわるトピックス

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No. 40 vario MICRO cubeの構造について 更新日:2018.3.12

vario MICRO cubeの構造を図示します.キャリヤーガスとしてヘリウムを,助燃ガスとして酸素を使い,燃焼管内で試料を燃やします.酸素ガスは細いチューブで局所的に導入され,効率良く試料を燃焼できる構造になっています.生成した気体のうち,窒素酸化物は還元管内で還元されて窒素ガスに変換され,これと二酸化炭素と水以外については銀ウールや添加剤等と結合して除去されて反応管内に残ります.窒素,二酸化炭素,水は吸脱着カラムに吸着され,カラム温度を段階的に上昇させることで順次脱着させて分離し,電気伝導度変化をクロマトグラムとして出力します.




<参考文献>
1. DKSH ジャパン株式会社 『vario MICRO cube 手順書』 (ver. 2015.0.1, soft_v3.1.10).
2. ‘Operating instructions vario MICRO cube’, Elementar Analysensysteme GmbH, ver. 12.11.2013.



No. 39 塩素の定性分析について 更新日:2018.1.26,2019.3.26


2018年7月以降,検量線作成方法変更に伴い定性分析の方針も変わりました.→Topics No.46参照

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定性分析結果は文献の検出限界値の計算方法(上本道久,分析化学における測定値の正しい取り扱い方,日刊工業新聞社,2012年, p31-40.)に従って報告しています。
塩素分析の場合のみ低濃度領域を定性分析の結果を報告している理由は、試料を包み込むろ紙そのものに塩素が微量含まれているため、検量線をつくる時に原点を通すことができないと考えているからです。
国内で一般的に入手できる有機微量分析用標準試料のうち、塩素の含有量がもっとも少ないものとしてNAC-st1(Cl: 9.72 %)を使っています。電子天秤の信頼性を充分に確保するため、試料量は最低でも1 mg以上はかり取ることにしています。また、前処理に使うフラスコの容量から、吸収液量は55 g程度を上限としています。
よって、検量線の最も低濃度に相当するプロットの理論上の濃度は以下の計算式から

1 (mg) x 9.72 (%) / 100 (%) = 0.0972 (mg)
0.0972 (mg) / {55 (g) x 1000 (mg / g)} = 1.767 (ppm)

と求められます。
ここでもし未知試料を2 mgに増やし、吸収液量を5 gまで減らした場合を想定すると、1.767 ppm以上含まれている場合、

5 (g) x 1.767 (ppm) x 10-6 = 8.835 (μg)
8.835 (μg) x 10-3 (mg/ μg) / 2 (mg) x 100 (百分率に) = 0.44 (%) − ①

となりますので、切り上げておよそ0.5 %以上含まれていれば定量可能だと言えます。
さらに未知試料を2 mgのままでも吸収液量を3 gまで減らせば同じ計算から、0.27 (%)、つまりおよそ0.3 %以上含まれていれば定量可能になってきます。

もしもX %以下であることを確認したいという具体的な値があるのでしたら、上の計算式①から、その値(X %)に適合するところまで吸収液量と試料量を調整して測定し、可能な限り低濃度に調整した標準試料のピーク高さとの比較から「X %以下です。」と報告することはできるかと思います。
吸収液量を減らすとその分バックグラウンドの濃度も高くなるので、液量に合わせた空試験も行います。



No. 38 元素分析に関連する文献(1) 更新日:2017.8.31


岩本振武, '物理量・数値・単位と分率の表記についての提言',ぶんせき,2017(8),p341-346.

<文献URL>
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2017/201708izumi.pdf


No. 37 シリーズ 〜 標準試料について⑤ 更新日:2017.8.24



     ナックテクノサービス 有機元素分析用標準試料
     コードNo.: NAC-st2
     試料名:N-(2'-bromo-4'-fluorophenyl)-4-iodobenzenesulfonamide
     組成式: C12H8BrFINO2S
     含有率%: C, 31.60; H, 1.77; N, 3.07 ; Br, 17.52; I, 27.83; F, 4.17; S, 7.03%
            

これも多元素同時分析を目的として開発された標準試料ですが,当分析室では各元素の含有量が少ないことを利用して,CHN分析およびハロゲン硫黄分析に使っています.このような標準試料はNACシリーズ以外にないのでとても重宝しています.イオンクロマトグラフィーにおけるカラム保持時間が長いヨウ素が含まれているので,測定時間の設定によっては次の測定のチャートにピークが重なって現れることに注意する必要があります.


                 分子模型で表された立体構造
<参考文献>
長嶋 潜,平野 敏子, '固体試料中のハロゲン・陰イオン分析', ぶんせき, 2014, 3, p101-106.


No. 36 使用機器,器具,試薬リスト(更新日:2017.4.5, 2017.4.7)


約2年前にvario MICRO cubeに完全に切り替わり,原理や手順,使用試薬等様々な点で変更がありました.遅ればせながら少しずつご紹介していきたいと思います.

<装置>

Elementar社 全自動元素分析装置 vario MICRO cube

<使用器具>

スズボート(Elementar社)
シルバーボート(Elementar社)
スズカップ(Tin Capsule Foil, φ3.5 mm x 9 mm, LUDI SWISS社)
グロッケン(冷却台,ガラス鐘)
天びん(ウルトラミクロ天びん METTLER-TOLEDO社 XP-2U)
無菌バッグ(株式会社 精宏)

<使用試薬>

燃焼管充填剤,助燃剤,妨害元素除去剤:
酸化銅(Elementar社)
MgO(Elementar社)
WO3(Elementar社, 粉末)
コランダムボール(Elementar社)
石英チップ(Elementar社)
石英ウール(Elementar社)

還元管充填剤:
還元銅(Wire,Elementar社)
シルバーウール(Elementar社)
石英ウール(Elementar社)

ガス: 株式会社 タツオカ,株式会社 鈴木商館
高純度酸素(G2グレード)
高純度ヘリウム(Pグレード)
窒素

標準試料:
<キシダ化学株式会社 有機元素分析用標準試料>
アンチピリン(Antipyrine C11H12N2O: C, 70.19; H, 6.43; N, 14.88%)
アセトアニリド(Acetanilide C8H9NO: C, 71.09; H, 6.71; N, 10.36%)
アントラセン(Anthracene C14H10: C, 94.34; H, 5.66%)
スルファチアゾール(Sulfathiazole C9H9N3O2S2: C, 42.34; H, 3.55; N, 16.46; S, 25.12%)
チオ尿素(Thiourea CH4N2S: C, 15.78; H, 5.30; N, 36.80%)
4-フルオロ安息香酸(4-Fluorobenzoic acid C7H5FO2: C, 60.01; H, 3.60%)
4-ニトロアニリン(4-Nitroaniline C6H6N2O2: C, 52.17; H, 4.38; N, 20.28%)
酒石酸ナトリウム(Sodium tartrate C4H4NaO6・2H2O: C, 20.88; H, 3.50%)
s-ベンジルチウロニウム クロリド(s-Benzylthiuronium chloride C8H11ClN2S: C, 47.40; H, 5.47; N, 13.82%)
ステアリン酸(Stearic acid C18H36O2: C, 76.00; H, 12.76%)
(4-クロロ-3-トリフルオロメチル)フェニルチオ尿素(4-Chloro-3-trifluoromathyl)phenylthiourea C8H6ClF3N2S: C, 37.73; H, 2.37; N, 11.90%)
インドメタシン(Indometacin C19H1&ClNO4: C, 63.78; H, 4.51; N, 3.91%)
<ナックテクノサービス株式会社>
NAC-st1(N-(2-bromo-4-fluorophenyl)-4-chlorobenzenesulfonamide C12H8BrClFNO2S: C, 39.53; H, 2.21; N, 3.84%)
NAC-st2(N-(2'-bromo-4'-fluorophenyl)-4-iodobenzenesulfonamide C12H8BrFINO2S: C, 31.60; H, 1.77; N, 3.07%)