測定にまつわるトピックス

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No. 4 測定原理(その3:還元)(更新日:2017.4.4)

<こちらの装置は2015年4月に廃棄し,エレメンター社vario MICRO cubeに切り替えました.>

還元管の構造を以下に示します.


還元管で起こる反応は以下の通りです.
I. NOxの還元


II. 余剰酸素の除去

      *検出器を守るため,余剰酸素を除去する.

      *600℃以上でCO2が還元され,COとCu2Oを生じる場合がある.

      *還元管の出口に充填したCuOにより上記反応で生成したCOをCO2に酸化する.

III. 硫黄,ハロゲンの除去
硫黄,ハロゲンは銀粒と反応させ,ハロゲン化銀,硫化銀として除去する.

参考文献:
内山一美,前橋良夫.役に立つ 有機微量元素分析.有機微量分析研究懇談会,みみずく舎,医学評論社,2008,42, 49-51p.


No. 3 測定原理(その2:燃焼分解)(更新日:2017.4.4)

<こちらの装置は2015年4月に廃棄し,エレメンター社vario MICRO cubeに切り替えました.>
測定原理のうち,燃焼分解の段階について以下に述べます.燃焼分解は燃焼管内にサンプルを導入することによって行います.

I. 燃焼管の充填方法
 燃焼管の充填方法は扱うサンプルによって異なりますが,当分析室ではフッ素含有試料を扱うことがあるため,MgO:CuOも使用して,下図のように充填します.


II. 助燃剤,妨害元素除去剤

(i) 助燃剤
 高温下,O2ガスと反応して生じた燃焼分解物と接触すると酸素を発生して酸化反応(ラジカル物質は酸化分解,COはCO2に,NOやN2OはNO2になる)を促す試薬.

 CuO:CHNの分析を行ってもシグナルが出ない,純度の高い試薬です.
 WO3:アルカリ金属など,炭酸塩を形成しやすい元素を含む場合に加えます.使用する前に毎回空焼きを行ってから使用します.

(ii) 妨害元素除去剤

 サルフィックス(Co3O4:Ag2O):硫黄除去剤.燃焼管の充填剤として主に用います.
 

 MgO:CuO;フッ素を含むサンプルの場合に加えます.以下の二種類の反応がおこるのを防ぎます.使用する前に毎回空焼きを行っています.

 1. フッ素化合物と石英(燃焼管およびサンプル導入棒)との反応
 
      *気体となって検出器に入ってしまいます.→Nとして検出
 2. フッ素化合物と炭素との反応(フッ素が水素に比較して等量以下の場合)
 
      *炭素を取り込んで容器に残留させてしまいます.→C値の減少

 サルフィックスによる除去は以下の反応により可能になります.
 
      *無機塩として容器に残留させます.

III. 燃焼温度

燃焼温度は以下のようにサンプルに合わせて設定します.
 Siを含むサンプル,液体,粘性固体,含溶媒サンプル:980 ℃
 その他サンプル:1000 ℃

参考文献:
元素分析技術セミナー ヤナコCHNコーダー 資料.東京,1999-04-02,ヤナコ分析工業,1999,11p.
内山一美,前橋良夫.役に立つ 有機微量元素分析.有機微量分析研究懇談会,みみずく舎,医学評論社,2008,31-32,101p.
佐伯喜美代,関俊子.“有機ケイ素およびフッ素化合物のCHN分析法について”.第68回日本分析化学会有機微量分析研究懇談会 第56回計測自動制御学会力学量計測部会 合同シンポジウム予稿集,岐阜,2001-05-10/12,日本分析化学会有機微量分析研究懇談会,2001,p.93-96.



No. 2 測定原理 (その1:概略)(更新日:2017.4.4)

<こちらの装置は2015年4月に廃棄し,エレメンター社vario MICRO cubeに切り替えました.>

元素分析にはいくつかの方法がありますが,当分析室で行っている燃焼法CHN分析に特化した内容を掲載します.

I. 燃焼・還元
 化合物を燃焼させることにより,炭素をCO2,水素をH2O,窒素を窒素酸化物(NOx)に変換します.これらのうち,窒素酸化物は還元して窒素ガスとしてから検出器および吸収管を通します.
II. 分離
 H2O吸収管,CO2吸収管により行います.(吸収管除去法)
III. 検出
 熱伝導度検出器が使われています.(差動熱伝導度法)

(注)二酸化炭素と水の両方を分離して取り除いたあとのすべての気体を窒素として検出器に入れるため,窒素でない他の不純物(妨害元素等)が存在した場合も窒素として検出されます.これらを除去するための対策は,燃焼・還元の段階で必要に応じて行います.

参考文献:
内山一美,前橋良夫.役に立つ 有機微量元素分析.有機微量分析研究懇談会,みみずく舎,医学評論社,2008,36-41p.
YANACO CHNコーダーMT-6 装置カタログ.ヤナコ分析工業.2000,14p.

No. 1 使用機器,器具,試薬リスト(更新日:2013.3.19,2017.4.4)

 受託分析で,しかも数値3つのみ(CHNの場合)のやりとりということもあり,依頼する側としてはブラックボックスになりがちかと思います.そこで,現在具体的にどのような試薬,装置を使ってどのような手順で行っているのか,についてご説明したいと思います.まずは装置,試薬リストを掲載します.
<こちらの装置は2015年4月に廃棄し,エレメンター社vario MICRO cubeに切り替えました.>

<測定装置>

 YANACO製 CHNコーダー MT-6
 オートサンプラー MTA-6

<使用器具>

 白金ボート(Yanaco)
 セラミックボート(Yanaco)
 グロッケン(冷却台,ガラス鐘)
 アルミパン(50 μl, SII, エポリードサービス社)
 スズカップ(Tin Capsule Foil, Large, 8x5 mm, Exeter Analytical Inc.)
 ガスバーナー
 石英キャピラリー
 天秤(ウルトラミクロ天秤 METTLER-TOLEDO社 XP-2U)

<使用試薬>(特に記載のないものはキシダ化学製品 有機元素分析用)

 助燃剤,妨害元素除去剤,燃焼管充填剤:
 酸化銅(キシダ化学製品:線状,φ0.6 mm x 2-5 mm)
 酸化銅(Merck製品: wire, 0.64 x 3 mm)
 サルフィックス(Co3O4:Ag2O 1:1)(0.8-2.5 mm, 8-20 mesh)
 MgO:CuO(1:4)(0.5-1.7 mm, 10-30 mesh)
 WO3(粉末)
 BaCl2·2H2O(0.5-0.9 mm, 20-30 mesh)
 標準試料:
 アンチピリン(Antipyrine C11H12N2O: C, 70.19; H, 6.43; N, 14.88; O, 8.50)
 アセトアニリド(Acetanilide C8H9NO: C, 71.09; H, 6.71; N, 10.36; O,11.84)
 アントラセン(Anthracene C14H10: C, 94.34; H, 5.66)
 コレステロール(Cholesterol C27H46O: C, 83.87; H, 11.99; O, 4.14)
 スルファチアゾール(Sulfathiazole C9H9N3O2S2: C, 42.34; H, 3.55; N, 16.46; S, 25.12)
 チオ尿素(Thiourea CH4N2S: C, 15.78; H, 5.30; N, 36.80; S, 42.12)
 4-フルオロ安息香酸(4-Fluorobenzoic acid C7H5FO2: C, 60.01; H, 3.60; F, 13.56; O, 22.84)

 吸収管充填剤:
 過塩素酸マグネシウム(青色,もしくは無色,0.7-1.7 mm, 10-24 mesh)
 ソーダタルク(NaOH 70%<, 粒状, 1.6-3.4 mm, 6-10 mesh)
 還元管充填剤:
 還元銅(線状,φ0.6 mm, 2-5 mm)
 銀(粒状)
 ガス:高千穂化学工業 →タツオカ
 高純度酸素(リサーチグレード)
 高純度ヘリウム(Pグレード)