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レーザーの光を用いた高速現象の研究 レーザーを光源とする分光法は、ハードウエアの進歩に支えられて大きく発展している。われわれは、レーザーからのパルス光出力を利用することによって,各種の時間分解分光計(ラマン分光計、赤外分光計、可視および近赤外分光計、けい光分光計)を独自に開発している。現在では、100フェムト秒(10-13秒)から1ミリ秒(10-3秒)にわたる過渡現象を観測することができるようになっている。 溶液の中で、分子同士は100フェムト秒に1回くらいの割合で衝突している。このように激しく変化する周囲の環境は、溶液中の分子が関与する諸現象に大きな影響を与える。日常の生活や生命の維持に深い関係を持つ化学反応も例外ではない。われわれは、開発したさまざまな時間分解分光手法を利用して凝縮相中の化学反応を新たな視点から観測し、短い時間にどのような現象が起こるかを分子レベルで解明している。 最近は、波長0.9から1.5μmで測定可能なフェムト秒時間分解近赤外分光計を製作し、これを用いて光触媒微粒子やミセル内部で生成した電子の動的挙動を観察している。生成してから1ピコ秒程度の間に電子が経験するさまざまな現象が明らかになっている。また、イオン液体などの微小構造中でエネルギーが散逸していく機構について研究している。
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