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ウェアラブル表面増強ラマン分光法(SERS)は、ヘルスケアにおいてかなりの支持を集めています。最近まで、ウェアラブル技術はフィットネストラッカーやスマートウォッチのような、身体活動や必要不可欠な生体情報をリアルタイムでモニタリングできるデバイスが主な特徴でした。これらのデバイスは、より健康志向の社会への基礎を築き、積極的な健康管理を促進しています。SERS技術のウェアラブル機器への統合は、この分野での大きな飛躍を意味しています。この画期的なツールは、汗や涙のような生体流体を通して、人体内の化学的・生体分子的プロセスの継続的、非侵襲的、リアルタイム分析を容易にします。微量濃度でも物質を検出できるその能力は、病気の早期診断や個別化医療にとって楽観的なイメージを描き、ヘルスケアを反応的なものから予防的なアプローチへと推し進めています。

分析手法のひとつであるSERSは、ナノスケールの粗面化またはナノ構造化された金属表面に分子が近接または直接付着すると、分子の振動スペクトルを増強します。この増幅メカニズムは、光(通常は近赤外レーザー光)にさらされたときに金属表面によって誘起される、局在化した表面プラズモン共鳴に由来します。この光励起の結果、ラマン散乱信号が劇的に増強され、ターゲット物質の極めて高感度な検出が可能になります。ウェアラブル機器にSERSを組み込むという技術的偉業は、人体内の特定の化学変化を常時監視する可能性を開きます。これは、個人の健康状態を理解する上で非常に貴重なデータの広範なプールを提供します。SERSは、毒素、代謝物、病気のバイオマーカーを含む幅広いスペクトルの物質を検出できることから、そのウェアラブル・フォーマットは、ヘルスケアと生物医学研究の新たな時代を切り開く可能性があります。

ウェアラブルSERSの分野における進歩を開拓するための継続的な探求において、合田研究室は革新的で柔軟な基板の開発に焦点を当てています。過去数年にわたり、我々は金と銀のナノメッシュ構造の開発と最適化に成功してきました。これらの構造は驚くべき柔軟性と効率を示し、現在のSERS基板の礎となっています。この基盤の上に立って、我々は現在、さまざまなバイオメディカル・アプリケーションにおけるウェアラブルSERSの大きな可能性の探求と活用に力を注いでいます。我々の研究は、リアルタイム・モニタリング、疾患検出、薬物送達におけるSERS技術のユニークな能力を活用し、新たな診断・治療の道を発見することを目的としています。この追求は、ウェアラブル診断の分野に革命をもたらすだけでなく、個別化医療における画期的な進歩への道を開くことを約束します。


参考文献


ウェアラブル分光学

  • 現場リーダー: 北濱 康孝
  • 研究支援: JSPS研究拠点形成事業、文部科学省Q-Leap、ホワイトロック財団、JST ASPIRE
  • 共同研究: セレンディピティラボ