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フーリエ変換コヒーレント反ストークスラマン散乱(Fourier-Transform Coherent Anti-Stokes Raman Scattering: FT-CARS)分光法は、超短パルスで分子振動を励起し、それを計測する時間領域ラマン分光法です。FT-CARS分光法は、周波数領域CARSやSRSなどの他のコヒーレントラマン分光法とは異なり、広帯域でバックグラウンドのないラマンスペクトルを得ることができるのが特徴です。FT-CARSのスペクトル取得レートにおいては、超短ポンプ・プローブパルス間の遅延時間の走査レートで決定され、高速メカニカルスキャナーやデュアルコム技術により、数十kHz以上の高レートが可能です。FT-CARSのスペクトル帯域は光パルス帯域幅で決まり、10fs以下のパルスで3,000cm-1以上のラマンスペクトルが得られることが実証されました。

FT-CARS分光法は、当初は顕微鏡観察用に開発されましたが、超高速領域への発展により、ラマンフローサイトメトリーや高速ケミカルイメージングなどのハイスループット領域への応用展開が可能になりました。現在では、最先端の光学技術を駆使して、FT-CARS分光法の高速性、帯域幅、感度を最大限に高め、化学、生物、医学、環境分野への新たな応用を開拓することを目指しています。


参考文献


コヒーレント振動分光法