理論計算を駆使した反応設計


有機金属反応の3D図集


有機銅化学反応の機構解明

 有機銅化学は1940年代にその有機合成上の有用性が認めらて以来,「もっとも有用な遷移金属」として有機合成に広く用いられてきたが,その反応機構の詳細は不明であった. 我々は有機銅錯体の反応性を大規模非経験的分子軌道計算によって解析し,反応発見以来50年経てなお反応機構の不明だった有機銅の2つの基本反応,アセチレンへの付加とオレフィンへの共役付加反応,の反応経路を解明した.この研究によって, 銅が典型元素と遷移元素の両方の性質を合わせ持つことが特徴的な反応性の根源であることを理論的に明かにした.ここで求まった多金属クラスター中間体や遷移状態の構造と,反応のポテンシャル局面は幾多の既知の実験事実をうまく説明するだけでなく,今後の反応設計に重要な指針を与えるものである.このような協同作用が有機リチウム化合物のアルデヒドへの付加にも重要であり,いわゆるキレート制御の付加反応の遷移状態の性質を決定していることも明かにした.

J. Am. Chem. Soc., 119, 4887-4899 (1997)

J. Am. Chem. Soc., 119, 4900-4910 (1997)

Chem. Lett. 1079-1080 (1997)