内在性 β-actin mRNA の1分子イメージング

生物はmRNAを時空間的に制御することで、タンパク質の存在量・局在を調整していることが近年明らかになり、細胞内におけるmRNAの動態の可視化する技術が求められています。我々は、mRNA可視化プローブ及び全反射蛍光顕微鏡法を用いることで、生細胞における、内在性mRNAの1分子イメージングを世界で初めて実現しました。標的とするmRNAは、細胞骨格の構成分子である、β-actinのmRNAです.RNA結合タンパク質PumilioのRNA認識アミノ酸を置換することで、β-actin mRNAを特異的に認識するmutant PUMを作製しました。それぞれのmutant PUMにEGFPの断片を融合させました。2つのmutant PUMがβ-actin mRNAに結合することで、それぞれのEGFP断片が近接、再構成し、蛍光を発します。

開発した手法を用いて、生細胞内のβ-actin mRNAを蛍光顕微鏡で観察しました。成長因子非添加の場合、個々のβ-actin mRNAが細胞全体に一様に分布しました。成長因子を添加すると、β-actin mRNAは細胞の近縁部に局在したことが確認されました(図a)。本手法は、β-actin mRNAの局在変化を1分子レベルで観察可能であることが示されました。さらに、個々のβ-actin mRNAを1分子追跡した結果、個々のβ-actin mRNAは平均1.78 µm/sで細胞骨格上を直線的に移動する様子が観察されました(図b)。この移動速度は、細胞骨格上のモータータンパク質の速度に近く、β-actin mRNAはモータ蛋白質によって細胞骨格上を運搬されることが、この結果から示唆されます。本研究で開発した手法は、細胞内のmRNA局在が関与している生命現象の解明に応用展開が可能です。

1.
T. Yamada, H. Yoshimura, A. Inaguma, T. Ozawa, Visualization of Nonengineered Single mRNAs in Living Cells Using Genetically Encoded Fluorescent Probes. Anal. Chem. 83, 5708–5714 (2011).
DOI:10.1021/ac2009405
1.
H. Yoshimura, A. Inaguma, T. Yamada, T. Ozawa, Fluorescent Probes for Imaging Endogenous β-Actin mRNA in Living Cells Using Fluorescent Protein-Tagged Pumilio. ACS Chem. Biol. 7, 999–1005 (2012).
DOI:10.1021/cb200474a

caspase probe