研究内容

probes分析化学研究室では,生体分子の構造と機能に関する情報を基本に独自に分子をデザインして,蛍光や発光などの電磁波を利用し,

  1. 生体分子の機能や動態を可視化する分析方法
  2. 細胞内シグナル伝達に関与する新規分子種同定法
  3. 生体分子の機能を制御する機能性タンパク質の創製

をテーマに研究を行っています.
分析化学における新しい原理の発見と検出法の開発をめざし,そして独自に開発する方法や技術を用いて,生命の謎を解き明かしていきます.また生体分子のメカニズムに関する基礎研究はもとより,ケミカルライブラリーのスクリーニングや新薬の開発などに役立たせる研究も行っています.

1)生体分子の機能および動態の可視化検出法

近年の分析法および解析技術の発展は,生命科学研究の飛躍的発展に大きく貢献してきました.キャピラリー電気泳動や質量分析装置はその代表例です.しかし多くの分析法は,細胞をすりつぶして分離・検出するアプローチがとられています.生体分子の"真の姿"を捉えるには,生きた生体内ではたらく生体分子の機能や動態を直接観察しなくてはなりません.
分析化学研究室では,細胞内小分子,RNA,タンパク質が,いつ・どこで・どのように機能を発現しているか,時間軸を含めた生体分子の機能を可視化する新たな研究方法と技術開発を進めています.これまでに,細胞内在性RNAの蛍光イメージング法,タンパク質間相互作用解析法,細胞内タンパク質リン酸化検出法,動物個体内のタンパク質細胞内動態イメージング法等を開発してきました.立体構造や機能が明らかとなったタンパク質をツールとして,タンパク質工学を駆使し,分子認識と情報変換を兼ね備えた分子プローブを開発しています.また,細胞内の生体分子を超解像イメージングする新たな顕微鏡システムの開発も行っています.

2)細胞内シグナル伝達に関与する新規分子種同定法

タンパク質や化合物などの生体分子の同定は,スクリーニング法の開発に大きく依存しています.新たなスクリーニング法が確立されれば,新規分子種の同定・発見が期待できます.分析化学研究室では,目的の機能を有するタンパク質やペプチドを,遺伝子ライブラリーからハイスループットにスクリーニングする独自の技術を開発し,ミトコンドリアや細胞内小胞に輸送されるタンパク質の網羅的解析法を開発してきました.またミトコンドリア膜間腔(IMS)への移行シグナル配列を,多種のペプチドライブラリーからスクリーニングにより決定し,人工タンパク質をIMSに局在させる機能性ペプチドであることを実証しています.最近では,GPCRに作用する化合物をハイスループットにスクリーニングする,新たな細胞を開発しました.新たな原理に基づくスクリーニング法を開発し,ペプチドやケミカルライブラリーから特異的な機能を有する分子の発見を目指しています.

3)生体分子の機能を制御する機能性タンパク質の創製

カルシウムキレート試薬EDTAをご存じでしょうか.EDTAは定量分析の目的に加え,カルシウムイオン濃度を制御する"金属イオン緩衝"としての重要な働きがあるます.このEDTAによる金属イオン緩衝はビーカー内での話ですが,同様に標的タンパク質の量や機能を化学的にあるいは物理的に制御できれば,生体内における標的タンパク質の機能や作用に関する重要な知見を得ることができるはずです.化学物質を利用したり電磁波を利用した生理活性の制御が可能になれば,細胞のみならず生物個体で機能する生体分子のはたらきをより詳しく調べることが可能になります.当研究室では,生体分子を制御するための新たな概念を創案し,生体分子の時空間制御法の開発を行っています.