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可視光応答型光触媒

 太陽光は永続的なエネルギー源である。グリーンケミストリーの観点から、太陽光エネルギーの有機合成化学への応用が望まれるものの、光化学反応は適用される有機分子の範囲が限られるため、その普遍的な応用は困難である。しかし、近年の研究によって、ポリピリジル金属錯体や有機色素が一部の有機化学反応に応用出来ることが明らかになった。当研究室では、可視光応答型光触媒を活用した新規触媒システムを構築することによって、従来は困難であった有機化学反応の開発に取り組んでいる。


Topics

  1. 高分子固定化可視光応答型光触媒の開発
  2. 可視光を用いるラジカル付加反応

高分子固定化可視光応答型光触媒の開発

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解説

 高分子固定触媒(当研究室ホームページ別項参照)は、金属触媒を高分子中に担持することによって金属触媒の漏出を防ぎつつ、容易に回収・再利用が出来る低環境負荷型の触媒である。これまでに当研究室では、様々な高活性金属触媒の固定化を行い、また、その回収・再利用を達成している。今回、当研究室は、モノマー単位として末端にアルケンを有するイリジウム光触媒を合成したのち、そのものをラジカル重合反応条件に付すことによって、不均一系触媒であるポリマー固定化可視光応答型光触媒を開発した。可視光照射下、この固定化光触媒を用いることによって、N–アリールテトラヒドロイソキノリンのホスホニル化反応が円滑に進行した。さらに、この固定化光触媒は高い触媒活性を維持したまま4度まで回収・再利用が可能であることが分かった。


論文へのアクセス

  1. Efficient Visible Light-Mediated Cross-Dehydrogenative Coupling Reactions of Tertiary Amines Catalyzed by a Polymer-Immobilized Iridium-Based Photocatalyst,
  2. W.-J. Yoo, S. Kobayashi,
  3. Green Chem., 16, 2438-2442 (2014). DOI: 10.1039/C4GC00058G

可視光を用いるラジカル付加反応

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解説

 有機リン化合物は、医薬・農薬にしばしば用いられるだけでなく、遷移金属触媒に対する配位子としても高機能を有する。このため、炭素−リン結合形成反応は合成化学上重要な反応の1つである。当研究室は、可視光を駆動力とすることによって、種々のアルケンと第二級ホスフィンオキシドとのヒドロホスホニル化反応を開発した。すなわち、可視光照射中、光触媒を用いることによって、上記のヒドロホスホニル化反応が円滑に進行し、温和な条件下、高収率で目的の化合物が得られた。また、当初は金属ポリピリジル錯体が本反応に優れた触媒であることを見出していたが、安価な有機色素を有機光触媒として用いた場合にも、収率良く目的の化合物を得られることが明らかとなった。


論文へのアスセス

  1. Hydrophosphinylation of Unactivated Alkenes with Secondary Phosphine Oxides Under Visible-Light Photocatalysis,
  2. W.-J. Yoo, S. Kobayashi,
  3. Green Chem., 15, 1844-1848 (2013). DOI: 10.1039/c3gc40482j