東京大学大学院理学系研究科化学専攻 大越慎一研究室
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      研究概要

当研究室では、新規物性および新規機能性を備えた強磁性体の創製を通じて、新しい物性化学の学術的フィールドを開くことをめざし研究を行っています。以下に、これまでに見出してきた物性に関して、その概略を現象ごとに示します。

1. 永続的に熱エネルギーを保存でき、弱い圧力で放熱できる“蓄熱セラミックス”を発見
2. 世界最小ハードフェライト磁石の開発
3. キラル光磁石の初合成と光の波面を90度スイッチングする新しい光磁気効果の発見
4. 巨大な保磁力と超高周波電磁波吸収を示すハードフェライト磁石
5. 光によって可逆的に金属-半導体転移を示す材料に関する研究
6. スピンクロスオーバー光磁性体の開発
7. 金属錯体を用いた新規な磁気物性に関する研究
8. 光と磁気の相関による新規現象に関する研究
9. 金属酸化物を用いた磁気物性の研究

ε-Fe2O3の第一原理計算

Eur. J. Inorg. Chem.の表紙に掲載されました(2017.1)。
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広い温度領域で低スピン状態を保つ金属錯体
Dalton Trans.の表紙に掲載されました(2016.12)。
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高い耐熱性を持つ金属錯体磁性体

Cryst. Eng. Comm.の表紙に掲載されました (2016.12)。
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キラル光磁石の90度光スイッチング

Nature Photonics の表紙に掲載されました(2014.1)。
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研究内容詳細

SHG活性を示す1次元希土類錯体磁性体
Cryst. Eng. Comm.の表紙に掲載されました(2017.1)。
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ε-Fe2O3: Hard magnetic ferrite

Bull. Chem. Soc. Jpn.の表紙に掲載されました(2013.8)。
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研究内容詳細

"ε-Fe2O3: An advanced nanomaterial"
Chem. Mater.の表紙に掲載されました (2010.12)。
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研究内容詳細
光でON-OFFする磁石の開発

Chem. Mater.の表紙に掲載されました(2008.5)。
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研究内容詳細
"Anti-wifi paint"

英国BBCニュース、ラジオ放送、および国内新聞に掲載されました(2009.9)。
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研究内容詳細

巨大な保磁力を有する光磁性体

Adv. Funct. Mater.の裏表紙に掲載されました(2012.4)。
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研究内容詳細

高性能ミリ波吸収磁性材料

Angew. Chem. Int. Ed.の表紙に掲載されました(2007.12)。
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研究内容詳細
様々な磁気機能性を有するプルシアンブルー類似体
Dalton. Trans.の表紙に掲載されました (2011.6)。
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研究内容詳細
二座配位子を用いた溶媒効果を示す分子磁性体
CrystEngCommの表紙に掲載されました(2016.3)。
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高い磁気相転移温度を示す分子磁性体
Eur. J. Inorg. Chem.の表紙に掲載されました(2012.6)。
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研究内容詳細
構造異方性をもつ分子磁性体

Chem. Commun.の表紙に掲載されました(2016.4)。
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湿度やアルコール蒸気に応答する金属錯体
Current Inorg. Chem.の表紙に掲載されました(2015.1)。
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研究内容詳細
光磁性を示すシアノ架橋型金属錯体

固体物理の表紙に掲載されました(2012.1)。
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研究内容詳細

光でON-OFFする金属酸化物
化学の表紙に掲載されるとともに、NHKニュース、国内新聞・雑誌に掲載されました(2010.5)。
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研究内容詳細
化学的刺激に応答する磁性体

現代化学の表紙に掲載されました(2008.2)。
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研究内容詳細
強誘電‐強磁性金属錯体

Angew. Chem. Int. Ed.のfrontpieceに掲載されました(2007.4)。
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研究内容詳細
磁気化学を基盤とした新規磁性物質の創成
東京大学低温センターの紀要の表紙に掲載されました(2011.10)。
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研究内容詳細
理学部ニュース表紙(ε-Fe2O3

大越研究室で見出した巨大保磁力 ε-Fe2O3が掲載されました。
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研究内容詳細
理学部ニュース表紙(キラル光磁石の90度光スイッチング)
大越研究室で見出したキラル光磁石の90度光スイッチングが掲載されました。
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研究内容詳細
理学部ニュース表紙(味の素第1号)

池田菊苗教授(当研究室 初代教授)の味の素発見から100年経ちました。
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紹介記事




1. 永続的に熱エネルギーを保存でき、弱い圧力で放熱できる“蓄熱セラミックス”を発見
永続的に熱エネルギーを保存できるセラミックス“蓄熱セラミックス(heat storage ceramics)”という新概念の物質を発見しました。この物質は、チタン原子と酸素原子のみからできた、ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンという物質で、230 kJ L-1の熱エネルギーを吸収・放出することができます。これは水の融解熱の約70%に相当する大きな熱量です。また、ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンは、保存した熱エネルギーを、60 MPaという弱い圧力を加えることで取り出すことができます。熱を加えるという方法に加えて、電流を流したり、光を照射したりという方法でもエネルギーを蓄熱することができ、多彩な方法で熱エネルギーの保存・放出を繰り返しできる物質です。ストライプ型-ラムダ-五酸化三チタンは単なる酸化チタンであり、環境にやさしく、埋蔵量も豊富で資源的にも恵まれた材料です。本蓄熱セラミックスは、欧州などで進められている太陽熱発電システムや、工場での廃熱エネルギーを有効に再生利用できる新素材として期待されるほか、感圧シート、繰り返し使用可能なポケットカイロ、感圧伝導度センサー、電流駆動型の抵抗変化型メモリー(ReRAM)、光記録メモリーなどの先端電子デバイスとしての新部材としての可能性も秘めています。
(H. Tokoro, S. Ohkoshi, et al., Nature Communications, (2015).)
*この成果は、Nature日本版 "注目の論文"、読売新聞、日刊工業新聞、日経産業新聞、化学工業日報、建設工業新聞、電気新聞、環境新聞、時事通信、科学新聞、日経エレクトロニクス、新エネルギー新聞、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版などに掲載されました。


2. 強力な磁石を観察できる顕微鏡プローブの開発-磁場に強く、電流も流れない、錆びないフェライト棒磁石が鍵-
サブミクロンサイズの巨大な保磁力を有するフェライト棒磁石を開発し、磁石の微小領域の形状を測定する磁気力顕微鏡用の探針(プローブ)に使用できることを見出しました。これにより、従来困難であった強力な磁石の表面観察や、強い磁場の下での磁気力顕微鏡観察が可能になると期待されます。フェライト磁石は、ありふれた安価な物質からできており、玩具、固定用具、工芸品などに使われています。通常、棒状のフェライト磁石(フェライト棒磁石)は、磁性粉に熱を加えて成型することによって製造されるため、単磁区の磁石(一対のN極とS極からなる磁性材料)を作れないという課題がありました。本研究では、磁性粉を圧縮する従来の方法ではなく、逆ミセルゾルゲル法という特殊な化学的合成法を用いることにより、単磁区構造をもつ単結晶のフェライト棒磁石の開発に成功しました。この棒磁石は、ε-Fe2O3と呼ばれる物質からなり、外側から強い磁力をかけてもN極とS極が反転しにくく、サブミクロンサイズの大きさでした。加えて、磁場の強い環境に置かれた場合でも、電流を加えた場合でも性質が変化することなく、錆びませんでした。そこで、これらの性質を利用した、磁気力顕微鏡プローブや、ミリ波吸収用途の塗布液とフィルムを開発しました。なお、ε-Fe2O3フェライト磁石は、高周波ミリ波吸収材として安全運転支援システムなどのモノのインターネット(Internet of Things: IoT)に貢献する新素材としても注目されており、2016年7月15日より英国立ロンドン科学博物館にて、フェライト磁石が特別展示される予定です。
(S. Ohkoshi, et al., Scientific Reports, (2016).)
*この成果は、日経産業新聞、科学新聞、Yahoo!ニュース、EETimesに掲載されました。


3. 世界最小ハードフェライト磁石の発見
東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授らの研究グループは、ナノサイズの世界最小ハードフェライト磁石、“イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)ナノ磁性粒子”の開発に成功しました。このハードフェライトは、鉄と酸素からできた単なる酸化鉄です。今回、イプシロン型-酸化鉄を5〜40ナノメートル(nm)の間の粒子サイズで系統的に合成する新技術を開発し、ε-Fe2O3が7.5 nm以上で磁石の性質(強磁性相転移)を示すことを明らかにしました。磁気テープやハードディスクなどの磁気記録メディアでは、3キロエルステッド(kOe)以上の保磁力が必要ですが、今回の材料は、8 nmで5 kOeの保磁力を示しており、超高密度磁気記録用の素材としての可能性を有しています。特に、ビッグデータのアーカイブ用大容量記録メディアとしてグーグルなどでも使用され、昨今、産業界でその復活がたいへん注目を浴びている磁気テープストレージの未来材料として期待されます。また、ε-Fe2O3はフェライト磁石の中で最も色が薄く、透明カラー磁性塗料やプリンター用のカラー磁性トナーなどの新しい用途への可能性も期待されます。ε-Fe2O3は、強磁性だけでなく、自発電気分極も持っていることが理論的にも実験的にも明らかになり、最小のマルチフェロイックフェライト粒子ということになります。鉄と酸素だけからなる酸化鉄は、環境にやさしく低価格であるため大量生産に適した材料であり、今回のナノサイズで強磁性を示すフェライト磁石は、次世代のアーカイブ用大容量磁気テープなどの高密度磁気記録技術などへの利用が期待できます。
(S. Ohkoshi et al., Scientific Reports, (2015).)
*この成果は、日刊工業新聞、化学工業日報、金属時評、科学新聞に掲載されました。


4. キラル光磁石の初合成と光の波面を90度スイッチングする新しい光磁気効果の発見
大越慎一教授(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)の研究グループは、キラルな構造を有し、青色光(波長473 nm)と赤色光(波長785 nm)を交互に照射することで可逆的に磁石の強さを変えることができるキラル光磁石を世界で初めて開発し、物質から出る光の波面を水平と垂直の間で可逆的に光スイッチングするという新現象を発見しました。合成した物質は鉄(Fe)イオンとニオブ(Nb)イオンをシアノ基(CN)で3次元的に架橋したキラル構造体であり、青色光と赤色光の交互照射により可逆的に磁石の性質を変えることができる新しいタイプの磁石です。このキラル光磁石を用い、非線形光学効果の一つである第2高調波発生(SHG)の研究を行った結果、光照射前の非磁石状態では、入射面に対して水平な波面の光入射に対して、垂直な波面の光の出射が観測されましたが、その状態に青色光を照射して磁石状態(光磁石状態I)にすると、水平な波面の光の出射が観測されました。また、引き続き赤色光を照射して磁力が弱い磁石状態(光磁石状態II)にすると、垂直な波面の第2高調波に戻りました。このように、青色と赤色の光で磁石の状態を変えることで、第2高調波として出射される光の波面を可逆的に90度スイッチングすることに成功しました。これまでにキラル光磁石は報告がなく、本物質が世界で初めての開発例となります。また、このような新しい物質を作り出したことで、キラリティと磁気的性質とが相関し、物質から出てくる光の波面が90度光スイッチングする現象の創出に成功しました。このスイッチング現象は、最先端の光科学と物質科学を融合させて初めて達成できた、従来のファラデー効果とは全く異なった現象です。本キラル光磁石では、90度光スイッチングのみならず、光誘起磁化の値に依存してSH出射光の偏光面を0度から90度まで自由に変えることが可能であり、その間の角度を使えば、現在の0と1を用いた2 進法による記録ではなく、"多進法方式の光磁気記録メモリー媒体"、光コンピューター素子や光センサー、光通信技術などへの応用が考えられます。
(S. Ohkoshi et al., Nature Photonics, (2014).)
*この成果は、Nature Photonics の表紙にハイライトされるとともに、大越教授のインタビュー記事が掲載されました。また 、TBSテレビ、日本経済新聞、日経産業新聞、化学工業日報、科学新聞、Yahoo!ニュースなどに掲載されました。


5. 巨大な保磁力と超高周波電磁波吸収を示すハードフェライト磁石
大越慎一教授(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)の研究グループは、極めて大きな保磁力を有する高性能フェライト磁石の開発に成功しました。今回開発したのは、化学的なナノ粒子合成法により得られた新規なフェライト磁石で、イプシロン酸化鉄(ε-Fe2O3)という磁石の鉄イオン(Fe3+)の一部をロジウムイオン(Rh3+)で置換した、ロジウム置換型イプシロン酸化鉄(ε-RhxFe2-xO3)ナノ粒子です。この物質は、室温で31 kOeという保磁力を記録しました。この保磁力の大きさはフェライト磁石の中で最も大きく、希土類磁石の保磁力に匹敵するものです。また、この磁石に電磁波の一種であるミリ波を照射したところ、220 ギガヘルツ(109ヘルツ)という高い周波数においてミリ波の偏光面の回転を示したことから、高周波ミリ波の磁気回転素子としての性能をもつことが分かりました。この周波数帯は、"大気の窓"と呼ばれ、大気による吸収が少なく無線通信に適した周波数帯とされていますが、これまでにこのような高い周波数の電磁波を吸収する磁性材料は知られていませんでした。本材料は、高画質テレビ通話や基板内無線通信などで将来有望視されているミリ波通信において、電磁波干渉問題を抑制するミリ波吸収体や磁気回転素子であるアイソレーターやサーキュレーターなどとしての役割が期待されます。
(A. Namai, S. Ohkoshi et al., Nature Communications, (2012).)
*この成果は、Nature Materials " Research Highlight ", Nature Japan "Focused Articles"、日経産業新聞、日刊工業新聞、科学新聞、Yahoo! ニュースなどに掲載されました。

6. 光によって可逆的に金属-半導体転移を示す材料に関する研究
大越慎一教授(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)の研究グループは、光照射により金属状態と半導体状態の間を室温で行ったり来たりできる新種の金属酸化物を発見しました。 この新種の金属酸化物(ラムダ型五酸化三チタン:λ-Ti3O5)(以下、ラムダ型酸化チタンと呼ぶ)は、界面活性剤を用いた化学的手法により作製できます。この物質は、光を当てると、金属的な性質をもつ黒色のラムダ型から半導体的な性質をもつ 茶色のベータ型(β-Ti3O5) への光相転移(光誘起金属-半導体転移)を示します。また、その逆の相転移も光照射により可能であることが分かりました。室温で光可逆的に相転移を示す金属酸化物は、この物質が世界で初めてです。ラムダ型酸化チタンは、チタン原子と酸素原子のみからなる単純な物質で、 レアメタルなどを含まないため、非常に安価で環境に優しい物質です。また、粒径が10〜20ナノメートル程度の微粒子で得られるため、 次世代の超高密度光記録材料としても有望です。 なお、このラムダ型酸化チタンは市販されている光触媒用の酸化チタンを水素気流下で焼成するだけでも得られることがわかり、 経済的コストおよび量産の両面から工業的にも有望です。
(S. Ohkoshi et al., Nature Chemistry, (2010).)
* この成果はNature Chemistry "News & Views", Nature Japan、ニュートン、日経サイエンス、Chemistry World、現代化学などに掲載されたほか、NHKニュース、TBSテレビ、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、日刊工業新聞、化学工業日報、産経新聞、科学新聞、The Japan Times、AFP通信などを通じて世界100ヶ国以上に配信されました。


7. スピンクロスオーバー光磁性体の開発
光を当てると非磁石の状態(常磁性状態)から磁石の状態(強磁性状態)へと変化する新種の光スイッチング磁石の開発に成功しました。この物質は、鉄(Fe)イオンと有機分子(4-ピリジンアルドキシム)、オクタシアノニオブを組み合わせた固体物質で、光照射により、鉄イオンのスピン状態が低スピン状態と高スピン状態の間で変化するスピンクロスオーバー現象を起こすことにより、非磁石の状態から磁石の状態に変換する新しいメカニズムの光磁石です。光磁石の磁気相転移温度は、20 Kであり、加熱処理により元の非磁石の状態に戻ります。スピンクロスオーバー分子が三次元的に連結した物質では、光によって磁石の状態に変換できるであろうという予想に基づき、今回、大越教授らは、スピンクロスオーバーを示す鉄イオンを、スピンを持つオクタシアノニオブ酸イオンを介して三次元的に架橋することにより達成しました。スピンクロスオーバー光磁性体は有機分子を多量に含むことが可能であり、将来、構造的に柔軟性があるフレキシブル光磁性材料への第一歩であると考えています。
(S. Ohkoshi et al., Nature Chemistry, (2011).)
*この成果は、日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報、Yahoo! Newsなどに掲載されました。また固体物理の表紙に掲載されました。

8. 金属錯体を用いた新規な磁気物性に関する研究
(1) 湿度に応答する磁性体(モイスチャーセンシティブ磁石)
(CoxMn1-x)[Cr(CN)6]2/3・5H2Oを合成し、湿度により磁気相転移温度、磁化、磁極が変化する磁性体の作製に成功しました。これは6-配位のCoIIが4-配位のCoIIに変換することにより、強磁性的な相互作用を示す6-CoII-CrVが反強磁性的な4-CoII-CrVにスイッチングしたことに起因します。このような湿度応答型磁性体は初めてです。
(S. Ohkoshi et al., Nature Materials, 3, 857 (2004).)
*この成果は日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報、科学新聞および雑誌などに掲載されました。
(2)スピンイオニクス
シアノ架橋型金属錯体であるCo[Cr(CN)6]2/3・zH2Oおよび V[Cr(CN)6]2/3・zH2Oにおいて、室温で高いプロトン伝導性を見出しました。また、キュリー温度以下において、プロトン伝導と強磁性の相関現象の観測に初めて成功しました。この観測によって、"スピンイオニクス"という新しい学術分野が開けると考えています。
(S. Ohkoshi et al., J. Am. Chem. Soc., (2010).)
* この成果はNature Asia MaterialsにResearch Highlightsとして掲載されました。
(3)強誘電‐強磁性金属錯体
シアノ架橋型金属錯体Rb0.82Mn[Fe(CN)6]0.94・H2Oにおいて強誘電性と強磁性が共存することを見出しました。強誘電性の起源は、鉄欠陥およびFeII, FeIII, MnII, ヤーンテラーひずみを有するMnIIIが混在することであり、また強磁性の起源はMnIIIのスピンが強磁性的相互作用により平行に整列していることで説明されます。
(S. Ohkoshi et al., Angew. Chem. Int. Ed., (2007).)
*highlighted in the frontispiece
(4) 熱により磁極が二回反転する磁性体(二重補償点磁性)
(NiaMnbFec)1.5[Cr(CN)6]磁性体を作製することで、二つの補償点(磁化がゼロとなる点)をもつ強磁性体の設計および合成に成功しました。この現象は、Ni、Mn、Fe、Crの副格子磁化の温度依存性が異なることに起因します。このような温度により磁極が二回反転する磁性体は初めてです。
(S. Ohkoshi et al., Phys. Rev. Lett., 82, 1285 (1999).)
*この研究は、NatureNews&Views, Physical Review Focusのほか、新潟日報、高知新聞、大分合同新聞、愛媛新聞、東奥日報、秋田魁新報、南日本新聞に掲載されました。

(5)化学的刺激(アルコール蒸気)に応答する磁性体
化学的刺激に応答する磁性体の合成の一環として、1-プロパノール蒸気に可逆に応答する CuII3[WV(CN)8]2(pyrimidine)2・8H2O強磁性体の合成に成功しました。可逆な磁気特性変化は、 1-プロパノール分子の吸着・脱離によりCuIIの配位構造が6配位八面体構造と5配位四角錐構造の間でスイッチングすることに起因していることを単結晶構造解析から明らかにしました。
(S. Ohkoshi et al., J. Am. Chem. Soc., 129, 3084 (2007).)
*この研究は、現代化学2008年2月号の表紙に掲載されました。
(6)強誘電性を示す金属錯体磁性体
Cu2[Mo(CN)8]・8H2Oにおいて強誘電性を見出しました。この物質は150 K付近で水素結合の凍結が見られ、強誘電性が増加しました。この物質では、ポーリング現象によって生じた電気分極が、水素結合やシアノ基の3次元ネットワーク構造によって保持され、強誘電性が発現したと考えられます。
(K. Nakagawa et al., Inorg. Chem., 47, 10910 (2008).)
(7) 磁場に対して異常な応答性を示す磁性体(逆保磁力を示す磁性体)
SmIIIxGdIII1-x[Cr(CN)6]4H2O では、従来の磁気ヒステリシスループとは異なり、逆保磁力を示すことを見出し、熱統計力学的計算により裏付けました。このような逆保磁力を示すバルク磁性材料は初めてです。
(S. Ohkoshi et al., Phys. Rev. B, 64, 132404 (2001).)
(8)高い磁気相転移温度を示す金属錯体磁性体 (TC= 210 K)
シアノ架橋型金属錯体のK0.59VII1.59VIII0.41[NbIV(CN)8]・(SO4)0.50・6.9H2Oにおいて、210 Kという高い磁気相転移温度を観測しました。この磁気相転移温度は、オクタシアノ金属錯体を構築素子とした分子磁性体の中で最高の値です。本錯体においてこのような高い磁気相転移温度が観測されたのは、オクタシアノニオブが高い配位数を有していること、そして広がった4d軌道を持つNbIVを用いたためにシアノ基を介したVII(S = 3/2)とNbIV(S = 1/2)の間の超交換相互作用が増大したことによると考えられます。
(K. Imoto, S. Ohkoshi et al., Eur. J. Inorg. Chem., 2649-2652 (2012).)
*この成果は、Highlight press release articleに選ばれ、Eur. J. Inorg. Chem.からプレスリリースされました。"Chemistry Views"などに掲載されました。
(9) 高スピンクラスター、メタ磁性体、ナノポーラス磁性体の構築
八配位型シアノ金属錯体 ([M(CN)8]n-; M = Mo, W)を構造素子として、ゼロ次元から三次元構造までの磁性錯体の合成を行いました。ゼロ次元の{Mn9[W(CN)8]6・24C2H5OH}は、スピン数S=39/2をもつ高スピンクラスターです。また、2次元メタ磁性体やホスト-ゲスト化学が期待される有機分子包摂型3次元磁性体、ナノポーラス磁性体などの合成を行っており、現在、これらの磁性体の化学的刺激に対する応答性を検討しています。
(S. Ohkoshi et al., Chem.Commun.2003をはじめJACS 2000, JACS 2003, JACS 2004) 
(10) スピンクロスオーバー現象を示す強磁性体
CsFe[Cr(CN)6]・1.3H2O強磁性体で、熱的相転移現象が観測されました。この相転移は、Fe(II)が温度によってハイスピン状態からロースピン状態に変化するスピンクロスオーバー現象によるものです。スピンクロスオーバー現象を示す強磁性体は、これが初めての例です。
(W. Kosaka et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 8590 (2005); D. Papanikolaou et al., J. Am. Chem. Soc., 128, 8358 (2006); J. Phys. Chem. C, 111, 8086 (2007).)
(11) 緩やかなスピンクロスオーバー現象を示すフェリ磁性体
冷却に伴って、FeII(S=2)-NbIV(S=1/2)-FeII(S=2)から、FeII(S=0)-NbIV(S=1/2)-FeII(S=2)への、緩やかなスピンクロスオーバー現象を示す磁性体Fe2[Nb(CN)8]・(3-pyCH2OH)8・4.6 H2O (3-py=3-pyridyl)を合成しました。またこの磁性体は、12 Kで強磁性転移するフェリ磁性体でありました。
(M. Arai et al., Angew. Chem. Int. Ed., 47, 6885 (2008).)
9. 光と磁気の相関による新規現象に関する研究
(1) 光磁性
光化学的アプローチによりこれまでに7種類の光磁性錯体を見出しています。(Fe0.40Mn0.60)1.5[Cr(CN)6]の光誘起磁極反転、RbMn[Fe(CN)6]の時間発展型光磁性、Cu2[Mo(CN)8]の可視光可逆な光誘起磁化、[{Co(3-CNpy)2}{W(CN)8}]、Co3[W(CN)8]2(pyrimidine)4・6H2O、Co3[W(CN)8]2(4-methylpyridine)2(pyrimidine)2・6H2OおよびFe[Cr(CN)6]の光誘起磁化です。次に四つの例を示します。

(A) 光誘起磁極反転 
フェロ磁性とフェリ磁性が理想的に共存した強磁性体 (Fe0.40Mn0.60)1.5[Cr(CN)6]・7.5H2O(Fe-Cr:フェロ磁性、Mn-Cr:フェリ磁性)を合成し、光照射を行った結果、磁化の符合が反転することを確認しました。この反転はフェロ磁性部分(Fe-Cr)の磁化が光により減少したため、フェリ磁性部分との磁化のバランスが変化したことに起因します。光により磁極が反転したのは、これが初めての例です。
(S. Ohkoshi et al., Appl. Phys. Lett., 70, 1040 (1997); J. Am. Chem. Soc., 121, 10591 (1999).)
*この成果は日本工業新聞および雑誌などに掲載されました。
(B) 時間発展する光誘起磁性相
RbMn[Fe(CN)6]の低温相にナノ秒パルスレーザー光を照射したところ、1ショットで磁化が消滅しました。一方、微弱なCWレーザー光を照射した場合には、消失した磁化が一定時間(数分〜数十分)経過した後、急激に回復するという時間発展的な挙動を示すことがわかりました。その消失時間は照射時間に依存していました。
(S. Ohkoshi et al., J. Phys. Chem B, 106, 2423 (2002); H. Tokoro et al., Appl. Phys. Lett., 82, 1245 (2003).)
*この成果は、化学工業日報、化学と工業に掲載されました。

(C) 可視光可逆な光誘起磁化
混合原子価錯体CuII2[MoIV(CN)8]・8H2O錯体に、473 nm光を照射したところ磁化が誘起されました。これは、MoIV→CuIIへの光誘起電荷移動が起こることに起因します。一方、658 nm光を照射したところ磁化は減少し、この錯体が可視光で可逆な光磁性を示すことがわかりました。また、この錯体の単結晶化および薄膜化も可能です。
(S. Ohkoshi et al., Chem. Lett., 4, 312 (2001); J. Am. Chem. Soc., 128, 270 (2006); T. Hozumi et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 3864 (2005).)

(D) 光でON-OFFする磁石の開発
コバルト (Co) イオンとタングステン(W) イオンがシアノ基 (CN) で架橋した3次元構造体Co3[W(CN)8]2(ピリミジン)4・6H2Oにおいて、2種類の波長の光により磁石と非磁石の状態間を可逆的にスイッチングする光磁性現象を見出しました 。この物質は、840 nmの光を照射すると、色相が青色から赤色へと変化すると共に、磁石としての性質を示すようになります。一方、この光誘起磁石に532 nmの光を照射すると磁化が消失し、元の状態に戻ります。この現象は、光を照射することにより、コバルトとタングステンの間で、可逆的に電子移動が起こり、磁石状態と非磁石状態間を行き来する点にあります。誘起された光強磁性相の磁気相転移温度(40 K)および保磁力(12 kOe)は、これまでに報告されている光磁石の中で最も優れた値であり、特に、保磁力は極めて高い値でした。
(S. Ohkoshi et al., Chem. Mater., 20, 3048 (2008))
*この成果は、2008年5月13日号のChem. Mater.の表紙に採用された他、朝日新聞、東京新聞、中日新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報および雑誌などに掲載されました。

(E) 高性能な光磁性体
コバルト (Co) イオンとタングステン(W) イオンがシアノ基 (CN) で架橋された3次元構造体Co3[W(CN)8]2(ピリミジン)2(4-メチルピリジン)2・6H2Oが、光磁性としては最高の磁気性能を有することを見出しました。この物質の低温相に785 nmの光を照射すると、磁石としての性質を示すようになり、この光磁性相は、磁気相転移温度48 K、保磁力27000 Oeを示しました。これらの値は、光磁性体としては最高の値です。また、この光誘起磁石は170 Kの熱処理を行うことにより、磁化が消失し、元の状態に戻ります。この現象は、タングステンとコバルトの間の光誘起電子移動に起因しています。
(N. Ozaki et al., Adv. Funct. Mater., 22, 2089 (2012).)
*この成果は、2012年5月23日号のAdv. Funct. Mater.の裏表紙に採用された他、日経産業新聞に掲載されました。
(2) 透明カラー磁性薄膜と磁気光学効果
金属錯体は、様々な鮮やかな色を呈します。この特徴を活かし、透明カラー磁性薄膜(FexCr1-x)1.5[Cr(CN)6]・7.5H2Oの作製を行いました。この薄膜は、成膜条件を変えることで、磁気特性を自由に制御できるとともに、膜の色も混合比に応じて黄色、赤、紫、無色透明と制御できることを見出しました。また、VCr[Cr(CN)6]系で Tc = 345 Kの青色ならびに緑色磁性薄膜を合成することに成功しています。加えて、これらの磁性膜で分子磁性体としては初めてのファラデー効果の観測に成功しました。
(S. Ohkoshi et al., J. Am. Chem. Soc., 120, 5349 (1998); J. Phys. Chem. B, 104, 9365 (2000).)
*これらの研究に関しては、C&EN誌、JACS誌(Hot Article)およびドイツ化学会のTechnical Insight誌などにトピックス記事として掲載されました。

(3) 磁化誘起第2高調波発生(MSHG)
(FexCr1-x)1.5[Cr(CN)6]・7.5H2O磁性薄膜において、第2高調波発生(SHG)ならびに磁化誘起第2高調波発生(MSHG)を観測しました。この磁性薄膜は膜厚方向に電気分極が存在する焦電性-強磁性体でした。また、AIBII[CIII(CN)6]型プルシアンブルー類似体が、圧電性-強磁性体であり、SHGおよび強磁性状態でMSHGを発現することを、CsICoII[CrIII(CN)6]およびRbMn[Fe(CN)6]で確認しました。
(S. Ohkoshi et al., Electrochem. Soc. Interface, 34 (2002); K. Ikeda et al, Chem. Phys. Lett., 349, 371 (2001); T. Nuida et al, J. Am. Chem. Soc., 127, 11604 (2005).)

(4) 光誘起相崩壊
シアノ架橋型金属錯体Rb0.43Mn[Fe(CN)6]0.81・3H2Oにおいて、準安定相から隠れた安定相への光誘起相転移、すなわち、光誘起相崩壊現象を見い出しました。当研究室では、RbMnFeシアノ金属錯体(RbxMn[Fe(CN)6](x+2)/3・zH2O)において、x > 0.64 の領域で高温相(MnII- FeIII)⇔ 低温相(MnIII-FeII)の温度誘起電荷移動型相転移を見出し、報告してきました。 本研究では、x= 0.43においては、室温から3 Kの範囲で電荷移動型の相転移が発現せず、高温相(MnII- FeIII)が保たれることを示しました。さらに、140 Kで410nm光を照射すると、電荷移動を伴った相転移が起こり、光誘起相が発現することを見出しました。この光誘起相の電子状態は、低温相(MnIII-FeII)と一致していました。この現象に熱力学的な解析を行なうと、光照射前に観測されていたMnII- FeIII相は準安定相であり、光照射により発現したMnIII-FeII相は安定相であることが示唆されました。すなわち、熱力学的に準安定相な相が光照射により崩壊し、隠れていた安定相が発現する、という、光誘起相崩壊現象を観測したと考えられます。
(H. Tokoro et al., Appl. Phys. Lett., 93, 021906/1-3,(2008).)

10. 金属酸化物を用いた磁気物性の研究
(1) 巨大な保磁力を示す酸化鉄ナノ磁性体の化学的合成

金属酸化物磁性体は、その化学的安定性・絶縁性などの観点から実用材料として普及しています。本研究では、逆ミセル法とゾル-ゲル法との組み合わせにより、室温で20 kOeという、金属酸化物で最大の保磁力を示す酸化鉄ナノ微粒子の合成に成功しました。因みに、それまでの最高値は6 kOeでした。 この微粒子は、酸化鉄の多形の中でも極めて稀なε- Fe2O3相のナノ微粒子であり、単相が得られたのはこれが初めてです。この材料に関しては、各国で研究が始まっています。
(S. Ohkoshi et al., J. Appl. Phys., 97, 10K312 (2005); J. Jin et al., Adv. Mater., 16, 48 (2004)など)


(2) 高性能ミリ波吸収磁性材料
画像情報をはじめとする大容量データ情報を伝送するための次世代方式として、現在、ミリ波(30〜300 GHz)を用いた高速無線通信法が大変注目を集めています。特に、室内LANなどのローカルエリアネットワークなどにはミリ波による無線高速通信が期待されています。ここ数年、米国大手電機メーカーなどによりミリ波発生用の安価な相補型金属酸化膜半導体(CMOS)の開発も発表されており、100 GHz領域のミリ波の使用が本格化してきています。また、76 GHzのミリ波は車間レーダー用途として大手自動車メーカーにより現在研究が行われています。一方、現在、80 GHz以上のミリ波を周波数選択的に吸収する材料はほとんどなく、この帯域での電磁波干渉の危険性が危惧されています。また、電磁波を長時間浴びることによる健康被害から、人体、特に妊婦や子供を保護するためには不要な電磁波はなるべく除去されることが望ましいと言われています。 当研究室ではDOWAエレクトロニクスと共同して、金属置換型ε-Fe2O3のミリ波吸収に関する研究を進めています。
(2-1) イプシロン型‐ガリウム酸化鉄のミリ波吸収
イプシロン型‐酸化鉄という特殊なナノ磁性体の鉄イオンの一部をガリウムイオンで置換した、イプシロン型‐ガリウム酸化鉄(ε-GaxFe2-x O3; 0.10 ≦ x ≦ 0.67)ナノ微粒子(粒径が30ナノメートル程度)を化学的に合成し、ガリウム置換量に応じて30 GHzから150 GHzまでの高い周波数領域でミリ波を有効かつ周波数選択的に吸収することを見出しました。これまでの磁性体では80 GHz程度が限界であったため、電磁波吸収材料として画期的な性能です。このミリ波吸収は、イプシロン型‐ガリウム酸化鉄磁性体がもつ高い保磁力により高い周波数に自然共鳴が現れたことに起因します。イプシロン型‐ガリウム酸化鉄は、金属酸化物であるため長期間に渡って安定します。電磁波干渉抑制材料として、オフィスや医療室の壁への塗布のほか、車、電車、飛行機の胴体への塗布、また、その選択的な共鳴周波数を用いてミリ波発信機を安定化させるサーキュレーターやアイソレターなどの新規ミリ波用電子デバイスへの応用も期待されます。
( S. Ohkoshi et al., Angew. Chem. Int. Ed., 46, 8392 (2007). (highlighted at the Inside Cover))
*この成果は朝日新聞、毎日新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞および雑誌などに掲載されました。


(2-2) イプシロン型‐アルミニウム酸化鉄のミリ波吸収
イプシロン型‐アルミニウム酸化鉄ナノ磁性体という物質を化学的に合成し、この物質が180 GHz(ギガヘルツ)を超えるこれまでで最も高い周波数のミリ波を吸収できることを見出しました。イプシロン型‐アルミニウム酸化鉄は94 GHzから182 GHzの間でアルミニウム置換量により周波数選択的な電磁波の吸収を示します。イプシロン型‐アルミニウム酸化鉄は、金属酸化物であるため長期間に渡って安定です。また、アルミニウムは地球上で3番目に埋蔵量が多い元素であるため、イプシロン型‐アルミニウム酸化鉄は材料コストが非常に経済的であり工業的応用に適しています。期待される産業的用途としては、EMI抑制材料として、医療室やオフィスの壁などの建材、車、電車、飛行機などの胴体への塗布、また、ミリ波発信機を安定化させるミリ波アイソレーターやサーキュレーターなどの高周波ミリ波用エレクトロニクス部品が挙げられます。
(A. Namai, et al., J. Am. Chem. Soc., 131, 1170 (2009).)
*この成果は英国BBC放送に取り上げられ、BBC World News、BBCラジオで放送されました。また、New Scientist(英国一般向け科学雑誌)、日経産業新聞、日刊工業新聞、化学工業日報などに掲載されました。

(3) フェリ磁性-反強磁性転移を示す酸化鉄磁性体
インジウムにより置換されたε酸化鉄ナノロッドε-InxFe2-xO3 (x=0.12, 0.24)の合成に成功しました。これらの試料は室温ではフェリ磁性体ですが、149 K (x=0.12)あるいは180 K (x=0.24)以下では反強磁性的に振舞います。この材料はフェリ磁性から反強磁性へと転移する最初の焦電性強磁性体です。
(S. Sakurai et al., Adv. Funct. Mater., 17, 2278 (2007).)

(4) 強誘電-強磁性体 
固相法により室温で強誘電と強磁性体が共存する(PLZT)x(BiFeO3)1-xの合成に成功しました。また、ゾル-ゲル法を用いることで薄膜を作製し、磁化誘起第2高調波発生の観測に成功しています。
(T. Kanai, S. Ohkoshi et al., Adv. Mater., 13, 487 (2001); J. Phys. Chem. Solid, 64, 391 (2003).)
 
(5) 磁化誘起第3高調波発生(MTHG)
ゾル-ゲル法により作製したビスマス-イットリウム鉄ガーネット(Bi-YIG)膜を用いて、磁化誘起第3高調発生(MTHG)の初観測に成功しました。この現象では、THGの偏光面が、外部磁場に依存して回転します。また、非線形感受率は、スピンによる時間反転性の破れを考慮した磁気点群のテンソル解析で理解できます。
(S. Ohkoshi et al., J. Opt. Soc. Am. B, 22, 196 (2005); J. Shimura et al., Appl. Phys. Lett., 82, 3290 (2003).)
 

東京大学大学院理学系研究科化学専攻大越研究室
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