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酸窒化物、酸フッ化物のエピタキシャル成長と電子機能の探索

 遷移金属酸化物は、ZnOやTiO2などのワイドギャップ半導体やBaTiO3に代表される強誘電体、巨大磁気抵抗効果を示すMn酸化物やCu酸化物系高温超伝導体など、極めて多彩な電子機能を示す物質群として盛んに研究が行われています。従来の研究の主流は金属イオンに注目したもので、複酸化物(ペロブスカイト型酸化物など)の金属の組み合わせを変えたり、固体化学的な手法で元素置換したりして機能制御を試みるものでした。これに対して、私たちのグループでは、酸素サイトの一部を窒素やフッ素で置換した化合物に注目して研究を行っています。

 例えば、ペロブスカイト型酸窒化物(一般式 ABO2N、ABON2)は、光触媒材料や有毒金属を含まない顔料材料として、10年ほど前から盛んに研究が行われている物質です。電子機能に関しても、共有結合性の強い金属-窒素結合が物質中で配列することによる強誘電性の発現や、酸化物よりも浅い価電子準位に起因する可視光応答性といった、新たな機能が期待されています。しかしながら、遷移金属酸窒化物は物性の精密評価に不可欠な単結晶や高密度焼結体の作製がバルク体では難しいという問題があり、電子機能はほとんど未開拓でした。そこで、パルスレーザー堆積法を用いたエピタキシャル成長を使って高品質な単結晶薄膜を直接作製し、新たな電子機能を探索しています。

 これまでの研究成果として、代表的なペロブスカイト型酸窒化物の一つであるSrTaO2Nのエピタキシャル薄膜の強誘電性の発見が挙げられます(図2)。この物質は、バルク試料を用いた従来の研究では常誘電性のみが報告されており、強誘電性の起源に興味が持たれます。

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図2. (左)SrTaO2Nの結晶構造(trans配置)。(中央)SrTaO2Nエピタキシャル薄膜の圧電応答顕微鏡(PFM)像(位相像)。導電性カンチレバーを使った分極処理によって明瞭なドメイン構造が形成されている。(右)SrTaO2Nエピタキシャル薄膜の圧電応答と電界の関係。強誘電性に対応するヒステリシスカーブが得られている。右下は作成したSrTaO2N薄膜の写真(黄色いパターンの部分に薄膜が堆積されている)。