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磁性酸化物半導体

 半導体エレクトロニクスのさらなる発展には、半導体エレクトロニクスを凌駕する新たなテクノロジー「Beyond CMOS技術」を創出する必要があります。そのBeyond CMOS技術の有力候補である半導体スピントロニクスでは、半導体デバイスのような電荷の制御に加えて電子のもう一つの自由度であるスピンの制御も行います(図3)。半導体スピントロニクス材料として強磁性体と半導体の性質を併せ持つ強磁性半導体が知られています。しかし、ほとんどの材料は室温まで強磁性を保てません。

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図3.半導体スピントロニクスの概念図

 我々は、透明酸化物半導体を強磁性半導体のホスト材料として使うことで室温強磁性が発現する可能性があることに着眼してプロジェクトを開始しました。そして、光触媒としても知られる二酸化チタンにコバルトを添加すると室温強磁性を示すことを発見しました。コバルト添加二酸化チタンは透明で電気伝導性を持つ室温強磁性体です。強磁性に転移するキュリー温度は600 Kと、他の強磁性半導体のキュリー温度をはるかに上回ります(図4)。しかし、その室温強磁性が発現するメカニズムが明らかでなく、これまで論争が続いていました。空間的に離れているコバルトイオンの持つ局在スピンの間の交換相互作用を、電子キャリア(のスピン)が媒介しているのであれば、コバルト添加二酸化チタンは(初めての)室温強磁性半導体であるといえます。そうすると、これまで低温動作に限られていた強磁性半導体を用いた半導体スピントロニクスデバイスを室温動作にまで引き上げることが可能になります。たとえば、電子濃度を増減することによって強磁性の強さの指標である磁化の大きさを室温で制御することは、スピントロニクスデバイスの重要な要素技術です。

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図4.主な強磁性半導体のキュリー温度。

 我々は、最近になって、半導体トランジスタのように電界効果で電子濃度を変えることで磁化の大きさも変化させ、室温において電界で誘起された強磁性を初めて観測することができました(図5)。つまり、電界効果により電子キャリアを蓄積することで、非磁性状態(常磁性)であったコバルト添加二酸化チタンを室温強磁性体に変えることができました。不可能とも考えられていた室温における強磁性の制御の道を開いたことになります。我々は、室温強磁性の制御法を開発することで、室温動作が可能な半導体スピントロニクスデバイスの実証を目指していきます(図6)。そのような制御法の開発には、基礎物性の理解も必要であるため、室温強磁性の発現機構の解明にも取り組んでいます。

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図5.電界誘起強磁性の概念図。

図6.室温強磁性半導体における強磁性の制御の例。

*本研究は、工学系研究科川崎研究室、岩佐研究室、幾原研究室、理学系研究科藤森研究室、新領域創成科学研究科溝川研究室との共同研究により行われました。本研究は、総合科学技術会議により制度設計された最先端・次世代研究開発支援プログラムにより、日本学術振興会を通して助成されたものです。