スペクトル化学研究センター
内容:
「構造化学」(教養課程)で学んだ量子論をさらに深く学ぶために、発展的な話をしたいと思います。具体的には、以下のテーマを考えています。板書による講義形式です。


1. 解析力学 速習 (半日で解析力学を網羅する特別講座です) 
Lagrange形式、Hamilton形式を説明し、正準変換の本質を理解する。Hamilton-Jacobi方程式、経路積分の考え方を基にSchrodinger方程式を導く。力学の美しさに感動できるのでは!? 

2. 物性化学 速習  (新ネタ) 
分子軌道法と原子価結合法の違いについて詳しく述べます。sp混成軌道の導出を行い、対称性の観点から点群について述べます。d軌道の結晶場理論を計算し、磁性について議論します。全て数式を駆使した物性物理学的なノートになります。物性化学(B2)の講義ではお話的なテーマになりがちとのことですが、ここでは上記のテーマに絞って、数式を用いて深く掘り下げて議論することを目指します。

日時およびカリキュラム: @理学部化学本館2階講義室 
2016/1/29金(3,4限)12:30 - 16:30 解析力学 速習
2016/2/5 金(3,4限)12:30 - 16:30 物性化学 速習1 
2016/3/8 火(3,4限)12:30 - 16:30 物性化学 速習2 物性化学 速習3 

シラバス
Chap. 1: 解析力学 速習
・Euler-Lagrange方程式の導出
・なぜL=T-Uなのか
・ルジャンドル変換
・ハミルトンの正準方程式
・4種類の正準変換の導出
・ハミルトンヤコビ方程式
・古典論の限界について
・経路積分によるシュレディンガー方程式の導出

Chap. 2: 物性化学 速習
・原子価結合法(Heitler-London法)による水素分子(H2)の記述
・なぜFeは強磁性になるか
・原子価結合法と分子軌道法の違い
・配置換相互作用による分子軌道の補正
・Van der Waals結合はなぜr-6の関数形となるか
・3d遷移金属周囲の結晶場エネルギー分裂10Dqの導出
・sp, sp2, sp3混成軌道の導出
・三原子分子AO2の分子軌道(A=第二周期元素)
・H2Oはなぜ104°の角度となるか
・結合角とWalshダイアグラム
・対称操作の基礎(指標など)
・水分子の群論による考察
・アンモニア分子の群論による考察
・ブタジエン分子の群論による考察
・ベンゼン分子の群論による考察
・(結論)群論を知ると永年方程式がブロック化され、計算が比較的容易になる。
・結晶場中の3d軌道の分裂の群論による考察(Oh群, Td群)
・d2電子配置の多重項の導出
・強い結晶場と弱い結晶場中のd2電子配置電子
・Betheの対称性低下法
・Tanabe-Sugano diagram
・混成軌道の群論による考察
・金属錯体の分子軌道と群論による考察
・錯体の色とスペクトル化学

参考図書:
分子の対称と群論 中崎 昌雄 (著), 東京化学同人

構造化学の講義クラスの人のみでなく、B1以上の上級生の参加も歓迎します。前提は、構造化学(教養課程)の内容のみとします。参考書などについても紹介します。言うまでもありませんが、成績とは一切関係ありません。興味のある人は、気軽にメールしてください。(岡林潤: jun あっと chem.s.u-tokyo.ac.jp)

昨年度の構造化学特論
今年度の構造化学(教養課程)