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東京大学大学院理学系研究科化学専攻  無機化学研究室(西原研究室)

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研究テーマ

発光性分子の光機能開拓

(1)蛍光性ジピリナト亜鉛錯体

 金属錯体は金属および配位子に由来する特異な物性を示すが、これに加えて金属-配位子間結合を活用した自己組織化や超分子構造体の構築が行うこともでき、有機分子に対する重要なアドバンテージの一つである。ジピリナト金属錯体は配位子のπ-π*遷移に由来する強い光吸収を持つことから光機能性材料への応用が期待されるが、蛍光特性という点でこれまで優れた物性を有するものは報告されていなかった。

 当研究室では異なる二つのジピリナト配位子を有する、「非対称」ビス(ジピリナト)亜鉛錯体を設計・開発し、これが非常に強い蛍光を発現することを明らかにした。配位子間で定量的な励起エネルギー移動が起こること、ならびに適切なフロンティア軌道の序列がジピリナト配位子間の電子移動による蛍光のクエンチを抑制することで蛍光が増強されることも明らかとしている。

蛍光性ジピリナト亜鉛錯体

  1. Kusaka, R. Sakamoto, Y. Kitagawa, M. Okumura, H. Nishihara,Chem.Asian J.2012,7, 907-910.→link
  2. R. Sakamoto, H. Nishihara et al.,Dalton Trans.2012,41, 14035-14037.→link

(2)メゾ位でπ拡張したBODIPY

 ジピリナト配位子のBF2カチオンとの錯体はBODIPYと呼ばれ、強吸収・強発光を特徴とする。この特性は、BODIPYの生体蛍光プローブや色素レーザーなどへの応用を可能としている。これらの応用例はBODIPYの蛍光・吸収波長の長波長シフトを要請し、その結果様々なπ拡張BODIPYの合成が報告されている。多くの有機化学的修飾はピロール環へのものであり、メゾ位に対する修飾例は限定されていた。

 我々はメゾ位にアリールアルキニル基を導入した新たなπ拡張BODIPYの合成、ならびに対応するBODIPYダイマーの合成に成功した。これらのπ拡張は吸収・蛍光波長の40-70 nmの長波長シフトをもたらした。メゾ位へのアリールアルキニル基の導入は、ジピリナト配位子のπ*軌道のエネルギーレベルの低下をもたらす一方、π軌道にはほとんど影響を与えないことがわかった。これはπ、π*軌道ともに影響を受ける、ピロール環への修飾とは異なった新しいフロンティア軌道のエンジニアリングに相当する。

メゾ位でπ拡張したBODIPY

  1. S. Kusaka, R. Sakamoto, Y. Kitagawa, M. Okumura, H. Nishihara,Chem.Asian J. in press.→link

(3) ペックマン色素のルネッサンス:新規合成法の開発、未発見異性体の発見、有機エレクトロニクスへの応用

 ペックマン色素(P55-Ph)は1882年にvon Pechmannによって初めて合成された。その構造異性体であるP66-Phも同定されている。どちらの化合物も交差p共役したジラクトン骨格を特徴としており、これに起因する可視領域の強い吸収、および蛍光性を有する優れた色素である。また、ラクトンの電子求引性による優れたアクセプター(電子を受容しやすい分子)であることも報告されている。P55-PhP66-Phの構造異性体のうち、p共役ジラクトン骨格を有する化合物に限定すると、P56-Phが浮上する。しかしながら、これまでのところ、P56-Phおよびその類縁体の合成例は報告されていなかった。

 我々は、ビス(アリールエチニル)フマル酸ジメチルを酢酸および塩酸中で加熱することにより、ペックマン色素骨格へと変換できることを見出した。この反応の最大の特色は、未発見構造異性体であるP56-Phおよびその類縁体が合成できる点にある。例えば、E-1からはP55-1P66-1のほか、P56-1が得られる。

 P55-1P66-1のほか、P56-1は可視〜近赤外領域に強い吸収を有し、高い蛍光量子収率も示した。また、P66-1の薄膜から作成したOFETはp型の半導体特性を示すことも明らかとした。

ペックマン色素のルネッサンス:新規合成法の開発、未発見異性体の発見、有機エレクトロニクスへの応用

Hayashi, M.; Toshimitsu, F.; Sakamoto, R.; Nishihara, H.J. Am. Chem. Soc.2011,133, 14518-14521. →link

(4)発光性ラジカル分子とこれを配位子とする金属錯体

 開殻電子構造を有するラジカル分子はそのユニークな電子状態に基づき、磁性、伝導性、レドックス特性など様々な機能を示す。一方でラジカル分子の発光特性に関しては長波長発光や高効率発光が期待されているものの、研究例が非常に少ない。これは、大部分のラジカルは発光を示さないこと(むしろ発光団のquencherとして機能する)、もしくは光照射下において速やかに分解することに起因する。ラジカルの発光特性はまだまだ未開拓の研究分野と言える。

 我々は新規なトリアリルメチルラジカル誘導体PyBTMを合成し、この分子が二重項状態に基づく蛍光を示すこと、また高い光安定性および大気安定性を有することを明らかにした。この高い光安定性は、より電気陰性度の大きい窒素原子の母骨格(TTM)への導入により、分子軌道のエネルギー準位が下がったことによるものと予想される。

 PyBTMのピリジン部位は外部刺激応答部位として機能する。我々はプロトンを外部刺激として用いることによりPyBTMの発光特性および電気化学特性を可逆的にスイッチできることを見出した。

光るラジカルPyBTM

    Hattori, Y. Kusamoto, T. Nishihara, H. Angew.Chem.Int. Ed. 2014,53, 11845-11848.→link

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