東京大学大学院理学系研究科化学専攻  無機化学研究室(西原研究室)

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研究テーマ

界面における機能開拓

(1)分子修飾電極

 近年、ナノサイズの構造体を構築する手法として、分子や原子を集積させることにより構造体を作り上げるボトムアップ法が関心を集めている。中でも、分子や原子間に働く相互作用による自己組織化を利用し、電極表面に単分子の膜を作製する自己組織化単分子膜(SAM:Self-assembled monolayer)がその作製法の簡便さや電極上に分子を固定することで様々な機能を付与できる点で注目されている。SAMは溶液系に比べ、実在のデバイス系により近い形態であることも特筆すべき点である。


 当研究室では、光によって構造変化を示すジアリールエテンを半導体電極であるSi(111)表面上に固定し、その構造変化を利用して電気伝導性を光で制御できることを示した。

K. Uchida, Y. Yamanoi, T. Yonezawa, and H. Nishihara, J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 9239-9241. →link


 当研究室オリジナルのフォトクロミック分子であるフェロニルアゾベンゼンは、フェロセンの可逆なレドックスと協奏することで単一波長(546 nm)のトランス−シス光異性化を示す。本分子をITO(Indium Tin Oxide)電極上に固定したSAMも、上記単一波長光異性化を発現することを見出した。


K. Namiki, A. Sakamoto, M. Murata, S. Kume, and H. Nishihara, Chem. Commun., 2007, 4650-4652. →link


 金ナノ粒子をシリコン表面に固定し、電流計測原子間力顕微鏡(conductive-AFM)を用いてナノ粒子を経由した電子輸送特性を評価したところ、電流−電圧曲線に階段状のステップが存在していることが確認された。これはナノ粒子の量子ドットとしての働きに由来する単一電子トンネリングによるものである。このような機能性分子修飾電極は分子スイッチ、メモリ、量子ドットなどの分子デバイスの創製につながると期待される。


T. Yonezawa, K. Uchida, Y. Yamanoi, S. Horinouchi, N. Terasaki, and H. Nishihara, Phys. Chem. Chem. Phys., 2008, 10, 6925-6927. →link

分子修飾電極


(2)逐次的錯形性法による金属錯体分子ワイヤの作製

 SAMをテンプレートとし、分子を多積層化することで機能性分子を積み上げ、より高次の機能性構造体を作成する研究が注目を集めている。これは既存の「トップダウン」的なデバイス作成法とは対照的な、「ボトムアップ」的なアプローチである。当研究室では金電極、ITO基板、水素終端化シリコン基板上におけるビステルピリジン金属錯体ワイヤの逐次合成、およびそれらの電気化学特製評価を行っている。金属錯体ワイヤは「逐次錯形成法」により簡便ながらも精密に合成できる。すなわち、基盤界面に表面固定用テルピリジン配位子のSAMを形成したのち、金属イオン溶液と架橋テルピリジン配位子に交互に浸漬することにより、層数、配位子・金属イオンの種類および配列、形状(直線型もしくは樹上型)を規定した金属錯体ワイヤを簡便に作製することができる。また、金属錯体由来の化学的および物理的な特性をワイヤに付与することができるため、高機能の分子システムの構築に寄与できると期待される。

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  1. K. Kanaizuka, M. Murata, Y. Nishimori, I. Mori, K. Nishio, H. Masuda, and H. Nishihara, Chem. Lett., 2005, 34, 534-535. →link
  2. Y. Ohba, K. Kanaizuka, M. Murata, and H. Nishihara, Macromol. Symp., 2006, 235, 31-38. →link
  3. M. Miyachi, M. Ohta, M. Nakai, Y. Kubota, Y. Yamanoi, T. Yonezawa, and H. Nishihara, Chem. Lett., 2008, 37, 404-405. →link
  4. M. Utsuno, F. Toshimitsu, S. Kume, and H. Nishihara, Macromol. Symp., 2008, 270, 153-160. →link
  5. H. Maeda, R. Sakamoto, Y. Nishimori, J. Sendo, F. Toshimitsu, Y. Yamanoi, and H. Nishihara, Chem. Commun., 2011, 47, 8644-8646. →link
  6. Y. Yamanoi, J. Sendo, T. Kobayashi, H. Maeda, Y. Yabusaki, M. Miyachi, R. Sakamoto, and H. Nishihara, J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 20433-20439. →link

(3)金属錯体分子ワイヤの電子移動挙動

 上記金属錯体ワイヤは、従来の金属錯体オリゴマーおよびポリマーとは異なり酸化還元活性種が規則的に配列されている。このような構造体における電子輸送機構について調べるため、金属錯体分子ワイヤに対してクロノアンペロメトリー測定を行った。すると、従来の酸化還元活性ポリマーなどが示す電流減衰挙動とは異なった、特殊なそれが確認された。分子ワイヤ内の電子が金属錯体部位を逐次ホッピング機構(sequential hopping)で輸送され、ワイヤ間での電子移動は起こらないと仮定した電子輸送モデルを組み実験結果と比較したところ、実験結果をよく再現した。

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  1. Y. Nishimori, K. Kanaizuka, M. Murata, and H. Nishihara, Chem. Asian J., 2007, 2, 367-376. →link

(4)金属錯体分子ワイヤの長距離電子輸送能

分子ワイヤの長距離電子輸送能を表す指標として、電子移動速度の距離依存減衰定数bがある。測定によって観測される電子移動速度kと電極からレドックス種までの距離d(分子ワイヤに沿った長さ)には次式の関係が成り立つ。

金属錯体分子ワイヤの長距離電子輸送能

したがってβの値が小さいほど電極とレドックス種の距離が遠くなっても電子移動が減衰せず、高い長距離電子輸送能を有していることとなる。

 当研究室で作成した金属錯体分子ワイヤは鉄イオンを用いた場合は最小でβ= 0.008 Å-1、コバルトイオンを用いた場合に最小でβ= 0.002 Å-1となった。これらの値は従来まで報告されてきたアルキル鎖:1.0、DNA鎖:0.1-1.4、オリゴフェニレンビニレン鎖:0.01と比べて小さく、金属錯体分子ワイヤが優れた長距離電子輸送能を有していることを示している。さらに、金属イオン、架橋配位子の組み合わせを変化させることにより長距離電子輸送能をチューニングできることを示した。また、電極固定用配位子や末端配位子はβには影響しないがk0を変化させることも見出した。

金属錯体分子ワイヤの長距離電子輸送能


  1. Y. Nishimori, K. Kanaizuka, T. Kurita, T. Nagatsu, Y. Segawa, F. Toshimitsu, S. Muratsugu, M. Utsuno, S. Kume, M. Murata and H. Nishihara, Chem. Asian J., 2009, 4, 1361-1367. →link
  2. T. Kurita, Y. Nishimori, F. Toshimitsu, S. Muratsugu, S. Kume and H. Nishihara, J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 4524-4525. →link
  3. Y. Nishimori, H. Maeda, S. Katagiri, J. Sendo, M. Miyachi, R. Sakamoto, Y. Yamanoi, and H. Nishihara, Macromol. Symp., 2012, 317-318, 276-285. →link
  4. S. Katagiri, R. Sakamoto, H. Maeda, Y. Nishimori, T. Kurita, and H. Nishihara, Chem. Eur. J., 2013, in press.
  5. R. Sakamoto, S. Katagiri, H. Maeda, and H. Nishihara, Chem. Lett, 2013, in press.

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  1. H. Nishihara, K. Kanaizuka, Y. Nishimori, and Y. Yamanoi, Coord. Chem. Rev., 2007, 251, 2674-2684. →link
  2. Y. Nishimori, Y. Yamanoi, S. Kume, and H. Nishihara, Electrochemistry, 2007, 75, 770-776. →link
  3. Y. Yamanoi, and H. Nishihara, Chem. Commun., 2007, 3983-3989. →link
  4. R. Sakamoto, S. Katagiri, H. Maeda, and H. Nishihara, Coord. Chem. Rev., 2012, in press. →link

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