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オルガネラ局在タンパク質のライブラリースクリーニング法


環境変化等の細胞外刺激が引き起こす遺伝子の発現とタンパク質の細胞内諸器官(オルガネラ)への移行は,細胞が効率的かつ協調的に機能するための重要な仕組みです.オルガネラに局在するタンパク質を解析するために,蛍光タンパク質を細胞内で再構成させる新たな手法を用いて,タンパク質のオルガネラへの移行の詳細を解析する新しい研究手法を開発しました.

(1)ミトコンドリア膜間腔移行シグナル配列の同定
ミトコンドリアの直径は1µm以下であるため,通常の光学顕微鏡では外膜と内膜で仕切られた空間を判別することはできません.我々はこれまでに,ミトコンドリアに局在するタンパク質を,cDNAライブラリーから同定する技術を開発しています(Nature Biotechnology, 21, 287–293 (2003)).この技術を応用して,ミトコンドリア内膜で囲まれるマトリックスに局在するタンパク質と,外膜と内膜で囲まれる膜間腔(IMS)に局在するタンパク質を,二分したGFPの再構成を利用して高速に判別する方法を開発しました(図1左).二分したGFPのC末側を含むプローブを作製し,マトリックスおよびIMSに局在させた細胞2種類を作製しました.試験タンパク質には,GFPのN末側を含むプローブ(EGFPn-DnaEn)を連結しました.もし試験タンパク質がマトリックスに移行すれば,図1左側の細胞のみが蛍光性となります.もし試験タンパク質がIMSに移行すれば,図1右側の細胞のみが蛍光性となります.

IMS局在タンパク質の一つであるSmacを用いて,Smacのどのアミノ酸がIMS局在に重要であるか,IMSシグナル配列の同定を目的とした.Smacにランダムにアミノ酸置換を加え(Smac mutants),そのミトコンドリア内局在を解析した.その結果,N末から50番目のMetがLysに,あるいは53番目のCysがArgに1アミノ酸置換するだけで,SmacはIMS からマトリックスに局在が変わることを明らかにしました.またミトコンドリアへのシグナル配列として考えられてきたN末から53 アミノ酸は,マトリックスへの移行シグナルとして機能していること,さらにそれに続く4アミノ酸—Ala-Val-Pro-Ile-を付加した57アミノ酸は,IMSへのシグナル配列として機能することを実証しました.
このミトコンドリア膜間腔移行シグナル配列を,様々な機能を有するタンパク質プローブに連結しました.GFP変異体の酸化還元プローブ,GFP変異体2分子を含むカルシウムプローブ,外部基質でラベル可能なhalotag,single chain antibody(ScFv)をIMSに局在させることが可能であることを実証しました(図1右). IMSシグナルペプチド配列を様々なプローブに連結すれば,IMSの機能解析の進展が期待できます.

ACS Chem. Biol., 2, 176–186 (2007).

 

(2)細胞内小胞に輸送されるタンパク質の網羅的同定法
ミトコンドリア膜間腔移行シグナル配列の同定法の原理を応用して,細胞内小胞(endoplasmic reticulum; ER)輸送タンパク質をgeneticなアプローチで網羅解析する方法を開発しました. DnaEのC末にEGFPのC末を連結して,マウス肝臓由来の培養細胞BNL1MEのER内に予め局在化させます.一方調べたいタンパク質をEGFPのN末とDnaEのN末に連結します.調べたいタンパク質がERに輸送されると,DnaEのN末とC末がミトコンドリア内で近接しスプライシング反応が起こります.その結果,ER内でEGFPが形成されます.

未知のタンパク質としてcDNAライブラリーを用い,C末側プローブが発現している細胞に,N末側プローブを連結したcDNAライブラリーを導入しました(図2).細胞を5日間培養後,ERが蛍光性の細胞を1500クローン回収しました.cDNAをgenetic PCRにより回収しその遺伝子解析を行ったところ,ERやゴルジ体に局在するタンパク質に加え,リソソームや細胞膜に局在するタンパク質,細胞外マトリックス局在タンパク質,分泌性タンパク質を100種類以上同定しました.また20種類以上の新規ER移行タンパク質を同定することに成功しました.開発した方法は,オルガネラ局在タンパク質をgeneticに同定する新たな方法として期待できます.

Nucleic. Acids Res., 33, e34 (2005).