フラーレン官能基化を軸とした機能分子設計


 


新型錯体触媒の創製

 


 外部刺激に感応してその機能を変化させるような新型錯体触媒の創製を目指したフラーレンの化学修飾の研究の過程で,C60と有機銅試薬(Ph2Cu-)の反応により,5つのPh基がC60の1つの5員環の廻りを取り囲むように位置選択的に連続付加し,シクロペンタジエン構造を含むフラーレン誘導体C60Ph5Hが定量的な収率で得られることを発見,さらにこれを用いて幾つかの5炭素結合型フラーレン金属錯体を合成することにも成功した.これらの錯体は全く新しい形のシクロペンタジエニル金属錯体として触媒反応などへの応用が期待される新規化合物である.


研究ハイライト

 C60と有機銅試薬の反応により合成されるC605重付加体C60R5Hは,球状π電子共役系とともにシクロペンタジエン構造を有しており,5炭素結合型有機金属錯体MLn(h5-C60R5)へと変換できる.我々は,このような5炭素結合型フラ−レン有機金属錯体を触媒や材料などに応用することを目指して研究している.電子状態の理論検討や電気化学的測定の結果, 4πまたは6π電子系のCp部位が5つのsp3炭素と50πポリエン部位がフラ−レンの球の内部を通してホモ共役していることが明らかになった.

A-7) J. Org. Chem. 62, 7912-7913 (1997)


生物機能物質の創製

 

 


研究ハイライト

  2つのカルベン活性種を連結した独自の設計分子を用いることにより,C60の30個の炭素−炭素二重結合のうちの特定の二箇所を位置選択的に官能基化する方法を開発し,これによりC2対称性を有する光学活性フラ−レンや異なる置換様式を有する様々な二重官能基化フラ−レンを合成した.このような合成手法を応用して水溶性フラ−レンを合成し,これらの化合物が細胞毒性,酵素阻害作用,光DNA切断などの幅広い生理活性を有することを明らかにした.最近,さらに生物有機化学的研究を進め,有機官能基化フラーレンが新しい遺伝子導入試薬として有用であることを見いだした.